就職活動が忙しい。そもそも志望理由をどう書けばいいかよくわからない。そんな人へ。

志望理由の書き方

毎年、就職活動が開始する時期になると、本屋の就職コーナーや町のカフェなどで不安げなリクルートスーツに身をまとった若者をみるようになります。その光景を見かけると、自分もリクルートスーツを着て大阪の梅田や新幹線や夜行バスで東京に何度も出かけたことを思い出します。あの時は、もし内定が出なかったらどうしよう、と毎日が不安との戦いだったと記憶しています。

今の僕が当時の僕に出会えるとすれば、色んなアドバイスが出来ます。まず就職活動ごときが上手くいかないからといって、全く絶望する必要がないという事実から話します。こんなクソみたいなシステムが稼働しているのは日本ならではですし、日本の大学生だからといって絶対に就職活動で内定をもらわなければいけないということはありません。仮に無名の会社に入社したとしても、自分の仕事に関係する会話能力や会計や法律などの普遍的な能力を鍛え続けていれば、確実に自分の市場価値は高まっていきます。人生単位で物事をみて、自分を信じて地道に頑張り続けましょう。

とんでもなく話がそれてしまいましたが、今回は就職活動で困っている人、特に志望理由の捻出方法で困っている人のために、どのようにすれば効率的に志望理由を作り出すことが出来るのかについて書いていきたいと思います。若干セコい方法なので、「本当に行きたい会社にだけ応募するべきだ!」と一回も社会に出ていないのに自分の働きたい会社を判断できる、もっと言えばやりたい職種ではなくて働きたい会社を判断できる特殊な人は、特にこの後は読まなくてもよいと思います。

まぁ実際は僕も就職活動中は「その会社が有名かどうか」「グローバルかどうか」というあやふやな軸で会社を選んでいたので人のことは言えないのですが、それこそ業界や規模を考えずにどんどん応募していました。その度に必要になるのか「自己PR」と「志望理由」でした。自己PRは普遍的なことを一度作り上げてしまえばあとはそれを少しいじるだけで色んな会社に応用が可能なのですが、志望理由だけはどうしてその会社なのか、ということまで落とし込む必要があるので非常に面倒でした。「志望理由?いや、純粋に働きたいからだけだよ」と何度思ったかわかりません。

そんなときにたどり着いたのがこれから説明する方法でした。これさえやれば「へぇ、良く調べてるね」とか面接中に言われるようになり、むしろ「なんで面接官が知らないんだ」と疑問に思うようになります。そうです。面接官も所詮はその会社でウダウダ働いている一人の人間なのです。立場上、相手の方が上に感じてしまうかもしれませんが、将来性を考慮すると面接を受ける学生側の方が縛りが無い分、むしろ可能性は無限大ということになります。

さて、前置きが長くなりすぎましたが、当時の僕のような色んな業界の企業に応募しまくっている人のために、頭でずっとうんうん考えるよりは比較的効率的に志望理由を作り出せる方法を書いていきます。

企業のIR情報を見る

まず最初にするべきことは、企業のIR情報(もしくは投資家情報となっています)を確認することです。IRとはInvestor Relationのことで、直訳すると投資家との関係ということになります。つまり、このサイトは企業が投資家に向かって「僕たちはすごいよ!是非投資して!(じゃないと株価が下がって買収されちゃう)」とアピールするページになっています。

つまり、他の企業と差別化していることや今後の方向性などをどんどんアピールしている情報がつまっているのがこのIRサイトなのであり、ここをフルに活用することで効率的に当該企業の情報を得ることが出来ます。ただ、企業によってページの内容が違うので、慣れるまでは自分が探している情報が見つかりにくいかもしれません。

基本的に就職活動に使える資料は3つです。それが「個人投資家説明会」といった投資家に向けた自社の説明会で使用した資料や、「中期経営計画」といった将来はこういう方向性で行きますよ、という情報が書かれている資料、そして「有価証券報告書」という企業の状態をびっしりと書き込まれている資料になります。未上場企業や投資家へアピールが少ない企業など、全部見つけることが出来ない企業もありますが、そういう場合は同業他社などから資料を引っ張り、同業はどのようなことをしているのかを比較してみましょう。

1.個人投資家説明会系の資料

このような資料からは、当該企業が同業他社に比べてどこが優れているのかをピックアップすることが出来ます。○○でNo.1と書かれていることもありますし、シェアが拡大や外国へ進出といった情報もふんだんに記載されていることが多いです。

もちろん、これらの情報を同業他社からもダウンロードして、比較する必要があります。どうせ両方応募することのなると思いますので、一気に数社の志望理由を書き上げるためにも同業他社分を全てダウンロードして、比較することで各社の強み弱みを全体的につかむようにしましょう。

2.経営計画系の資料

企業によっては今後の中期経営計画などの資料を手に入れることも出来ます。そんなときはその企業の今後の方向性をピックアップしておき、面接でうっとうしい「今後どのようなキャリアを積んでいきたいか」と呼ばれる質問などのときに同じような方向性で回答できるようにしておきましょう。例えば資料に「海外売上比率を30%まで上げる」と書いてあれば「目の前の仕事に全力で取り組みながらも英語力を鍛えて、ゆくゆくは御社の商品を海外へうんたらかんたら」という感じです。逆に「国内シェアの首位を目指す」と書いてあれば「御社の中で一番売り上げる営業の一員となり、シェアのNo.1を担う役割をうんたらかんたら」という感じです。このあたりは当たり前ですが、自分の本当の気持ちを何割かは混ぜてください。全てうそよりも何割か本当の気持ちが入っている方が話の熱の入り方に違いが出ます。あと、話す内容は面接官の雰囲気などで随時変更してください。原稿の丸覚えなどはギクシャクして最悪です。

3.有価証券報告書

こちらが上場企業であればどこでも手に入る、最強の資料になります。IRページの「有価証券報告書」という箇所をクリックすれば見ることが出来るのですが、企業によっては「決算短信」と呼ばれる就活にはほとんど役に立たない資料しか載せていない可能性もありますので、そういう場合はEDINETと呼ばれるところからダウンロード可能です。ダウンロードの仕方はこの記事の趣旨からは離れてしまうので、別途検索するなどして調べてみてください。結構簡単です。とにかく、基本的には企業のサイトから「有価証券報告書」というものをダウンロードできるようになっています。他にも「四半期報告書」や「中間期(もしくは半期)報告書」と書かれてある資料もあると思いますが、無視で構いません。必要なのは「有価証券報告書」のみです。

有価証券報告書は非常に分厚く、100ページを超える分量も普通なので、全部読んでいると眠くなるうえに時間の無駄なので、どの箇所を読めば良いのかを記載していきます。以下は有価証券報告書の就活に向けた活用方法になります。この膨大な資料の中から、どのような箇所を使えば効率的なのかについて書いていきます。目次を見ながら確認してみてください。ちなみに有価証券報告書の書き方は法律で決まっているので、会社によって状況は違いますが書かなければならない内容は同じになります。つまり、他社比較が非常にやりやすいのです。では、具体的に見ていきます。

有価証券報告書の使い方

第1【企業の概況】

まず、就職活動に必要な情報の大半は「第一部 企業情報」の中につまっています。その最初に来るのがこちらの箇所、企業の概況になります。そして【主要な経営指標等の推移】の箇所に色んな数字が並んでいると思いますが、就活生が気になる情報はただ一つ「つぶれるのか」という一点だと思います。

企業の安定性を見る指標は色々あるのですが、就活生にそんな分析をしている時間はありません。そこで見てほしいのが「営業活動によるキャッシュ・フロー」と書かれているところです。ここが三角△(つまりマイナス)になっている企業は出来る限り避けてください。超簡単に説明すると、「会社として1年間営業したらお金減ってました」という最悪の状態です。これが何年か続いたらその会社は当たり前ですが潰れます。

続けて読み進めていくと、【沿革】や【事業の内容】でどのような歴史と事業を行っているのかをざっくりと把握します。【関係会社の状況】で国内や海外にどれほど子会社や関連会社を持っているのかを把握します。このあたりは必死になって覚えるというよりは、会社の全体像をつかむ感じでいきましょう。

そのあとに書いてある【従業員の状況】が、就職活動生にとって重要な「年収」が書いてある箇所になります。(2)提出会社の状況という箇所に平均年齢と平均年収が書いてあるので、ひとつの参考としてください。ただ、間違っても「年収が高いから」と日系企業の志望理由で言ってはいけません。そして、事業セグメントごとの従業員の人数も知ることが出来ます。このあたりも他社と比較することによって、会社がどの分野に力を入れているのかを知ることが出来ます。基本的に人数が多いセグメントに力を入れていると考えて大丈夫です。

第2【事業の状況】

ここでは、【業績等の概要】で当該企業がどのような事業を行っているのか、そしてその事業はどのような状態かということを知ることが出来ます。ここでも必要となるのは同業他社との比較です。どの会社のどのビジネスが上手くいっているのかを比較することで、より深く企業分析をすることが可能です。

その後の【販売の状況】で、各ビジネスがどれほどの規模の売上をあげているのかが分かります。ここで必要なのもやはり同業他社比較で、各社がどの分野に強いのかを数字で判断することが可能です。

そして、僕が就職活動に必要だと思うのが次の【対処すべき課題】と、そのあとに続く【事業等のリスク】という箇所になります。この箇所は、会社が自分で認める「足りない箇所」をふんだんに書いています。中にはほとんど記載がない企業もありますが、もし書いている場合は、こちらを補う形で志望理由を考えれば良いのです。会社によっては、「○○といった人材の確保」など、直球で必要な人材について書いてある会社もあった気がします。例えば、住友商事の有価証券報告書には、以下のような記載があります。

また、事業投資マネジメント力の強化、海外地域組織の基盤強化、財務健全性の維持、求められる人材の育成と活用を通じて、収益力を支える経営基盤をより強固なものにしていきます。

こちらは対処すべき課題からの引用ですが、この時点で「サークルや部活動などのリーダー役をきっちりとおさめた人」や「海外経験が豊富な人」や「会計分野の勉強をきっちり行った人」は有利な状況におかれていることがわかります。

志望理由の組み立て

いよいよ志望理由を組み立てる段階なのですが、ここまで情報をおさえることができれば、あとはそれらを組み合わせればある程度のレベルの志望理由ができあがります。

自分の強みを生かしてor磨き続けて、○○の強みを持つような御社で全力で働くことによって、○○の分野に貢献していきたいと考えた。

などになると思いますが、これだけで「御社のCSR活動に共感して」「御社の理念に共感して」といった志望理由とは劇的な差を生み出すことが出来ます。上記の文章の中では、今まで調べてきた他社比較の中からピックアップした情報をふりかけることでより具体的なものになります。

ちなみに僕が良く使っていたのは以下のようなものになります。例えば自動車業界を例にとってみますと

日本製の車は良い。○○な経験をして、車が持つ可能性に気が付いた。もっと色んな人に自分と同じ素晴らしい経験を積んでほしい(ここは自分の経験などから適当に作成してください)。などを軸に

<先進国に強い企業の場合>
日本の製品は売れているというが、まだ全然足りないと思う。○○(先進国の名前)に滞在した際、確かに日本車は多かったがまだまだ売れると感じた。もっと多くの人々に日本車の素晴らしさを経験してもらいたい(圧倒的なシェアを取りたい)。

<途上国に強い企業の場合>
まず車自体が非常に少ない。道路の状況も悪く、あの中を故障なしに何年も使えるのは日本車だけだと思う。もっと日本車を普及させることによって、途上国の人々の暮らしに貢献できると感じた(シェアをアップしたい)。

このような流れでどちらにも対応できるようにしておき、そして自分の強みを磨き続けて、最終的に日本車の普及に貢献したいといった方向で着地させれば良いと思います。そのあとに、「どうして弊社なのか」となった場合は、事前に調べておいた情報を出し、「このような環境が揃っているのは御社だけ。最も成長できると感じた」と言えば、サクッと作り上げた志望理由にしては差別化が効いたモノになります。

終わりに

以上で、志望理由の書き方を終わりますが、もちろんこれだけで上手くいくとは限りません。もちろんこれで面接などに行ってもどんどん落ちますし、落ちたら凹みます。僕も何十社落ちたか忘れましたが、とにかくお祈りメールを何度いただいたかわかりません。ですが、上記のような方法でどんどん志望理由などを改善していけば、第一志望ではない企業(言い方は悪いですが)にもとにかく応募を続けていれば、そのうちに上手くいく企業が現れます。そのあとに自分が興味ある企業に絞って、集中して就職活動を続ければ良いのです。言い方は悪いですが、すべり止めです。

もし自分が行きたい企業がダメでも、全く悲観することはありません。もちろん反省点を洗い出してそこを改善していく作業は大事ですが、自分をダメと思う理由はどこにもありません。大学を続けながらアルバイトとしてバリバリ働いて正社員登用を目指す。有名な大学院に学歴ロンダリングを目指す。半年海外の聞いたこともないような国で住んで、その後帰国してその国との関係がある組織でインターンなりお手伝いなりアルバイトを行い、アピールポイントを作り出す。普通の就活でダメなら、別の方法を模索すれば良いだけです。

僕の友人にも、就職浪人を行い半年は語学留学、半年企業で全力インターンで総合商社に入った人もいます。インドでひたすら放浪を繰り返して公務員になった人もいます。最後まであきらめずに卒業間近に出版業界に内定した人もいます。派遣社員から頭角を現して正社員になった人もいます。会社に入らずに農業の道にすすんだ人もいます。一旦社会に出てお金を貯めてUSCPAになり、自分のやりたい仕事についた人もいます。

新卒が一斉に入社する就職活動の形がすべてではありません。あなたの人生は会社が決めるのではなく、あなたが自由に決めて良いのです。もちろん色んな制約はありますが、できる限り自由にいきましょう。