前回はリーマンショックに至る過程の内、サブプライム問題、パリバショックからの世界への波及という観点を見ていきました。

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リーマンショック振り返りその1

今回は、これまでに見てきた問題が集約し、リーマンショックという金融危機が発生するまでについて書いていきたいと思います。リーマンショックとは、簡単にいうとアメリカの投資銀行であるリーマンブラザーズが倒産することにより、世界中が不況に陥ったことになります。ここで確認しておきたいのが、そもそも「倒産」とはどういうことを指すのでしょうか。

<倒産とは>

テレビのニュースや新聞などで「倒産」という単語を見ることがあると思いますが、果たして倒産とはどういう意味なのでしょうか。企業情報の取り扱いを生業とする大手企業の帝国データバンクによると、倒産とは以下のような定義になっています。

  • 銀行取引の停止処分を受ける
  • 内整理する(代表が倒産を認めた時)
  • 裁判所に会社更生手続開始を申請する
  • 裁判所に民事再生手続を申請する
  • 裁判所に破産手続開始を申請する
  • 裁判所に特別清算開始を申請する

*株式会社帝国データバンクHPより引用

専門的な用語が並んでいるので、少し想像がつきにくいと思います。そこで、この記事では倒産を以下のように定義します。

  • 倒産:企業がお金を払えなくなった時

企業が何か支払わなければならないときに支払うことが出来ない、または猶予してくれないといった理由で、支払の義務を果たせなくなったときに倒産します。これは、たとえ連続で赤字だろうがなんだろうが、支払を続けることが出来るのであれば倒産ではないということになります。逆に、連続で黒字だとしても支払が出来なくなったら倒産となります。

銀行が倒産する理由

今回倒産したリーマンブラザーズは投資銀行という銀行とはかなり違う部類の企業になりますが、その倒産から様々な銀行が危機に陥った理由を知るためには銀行がなぜ倒産するのかのメカニズムを知るとスムーズになると思います。銀行とは僕たちの預けた(実質貸した)お金が普通預金などの形で集まるところになります。普通に考えると、お金がたくさん集まってくる銀行が倒産することは基本的にないと考えます。ところが、銀行は日本でも過去に倒産しましたし、これからも倒産していくかもしれません。どうしてお金が集まる銀行が倒産するかを理解するためには、僕らが預けたお金がどうなっているのかを知ることが重要になります。

(例)僕がA銀行に100万円を預け入れるとします。この100万円は、最低限の水準となる金額だけを残して残りは他のお金を必要としている会社に貸し出されることになります。ここではこの最低限の水準を、わかりやすくするために10%と仮定します。また、銀行は最低限の金額を残してあとは全て貸し出しに回すと仮定します。

さて、僕から100万円を預かった銀行は、その10%である10万円を残して、残りの90万円をB株式会社に貸し出すことにしました。その90万円に利子をつけて返してもらい、僕に利息を払ってその差額で儲けるのが銀行の基本ビジネスです。ではここで、90万円を借りたB株式会社の方を見てみます。

B株式会社は90万円を借りたらまずどうするか。いきなり全て使うかもしれませんが、一旦銀行に預け入れることになると思います。必要な時が来るまでは預けておくのです。このとき、B株式会社はC銀行に借りたお金である90万円を預けたとします。そうすると、C銀行は預けてもらった90万円の10%、つまり9万円を残して残りの81万円を他の企業などに貸し出すことになります。その貸し出された企業はまた銀行に一旦預けることになります。これを繰り返すことにより、僕が当初預けた100万円は実際の金額の何倍にも膨れ上がることになります。これを「信用創造」といいます。

ここに、銀行が倒産するポイントがあります。銀行が預かったお金は、全て銀行の手元に置いてあるわけではありません。実は銀行の手元にある現金は少なく、ほとんどを貸し出しに回していることになります。では、急激に銀行が巨額のお金が必要になった場合はどうするのでしょうか。

インターバンク市場

その銀行の資金ニーズを満たすために重要な役割を果たしているのが、インターバンク市場、つまり銀行間のやりとりを行う市場になります。単純にいうと、銀行たちだけでお金の貸し借りを行う市場になります。仮に上記の例で僕がいきなり100万円を引き出したいと言い、A銀行に100万円の現金が無かった場合(ありえませんが)、インターバンク市場で他の銀行(例えばC銀行)から100万円を借りて僕に渡すことになります。その後、借りたA銀行はC銀行に利子をつけて100万円を後日返すことになります。

つまり、銀行にお金が必要になった場合には、他の銀行からの借り入れによってまかなうことがあります。ここが、銀行が倒産するポイントになります。次に、銀行が倒産する理由のひとつを見ていきます。

銀行はなぜ倒産するのか

いきなり結論から書いてしまうと、信用を極限まで失った銀行は残念ながら倒産してしまう可能性があります。つまり、他の銀行から「こいつは貸しても返せないんじゃないか」と疑われる銀行が倒産することになります。

例えばバブル崩壊時の日本の銀行を見てみると、仮にA銀行が巨額の投資を土地に対して行っていたとします。そして、バブル崩壊により土地の値段が急激に下がったとします。すると、悪いうわさが流れ始めます。

  • 「A銀行の持っている土地は値下がりがすごいらしい」
  • 「土地への投資による損失を補てんするために資産の売却を行っているらしい」
  • 「A銀行は危ないらしいよ」

こうなってくると、預金者は非常に不安になります。A銀行に預けているお金が返ってこないかもしれないからです。そこで、とりあえずA銀行から別の銀行、もしくはタンスなどに隠しておくためにA銀行から預金を引き出します。すると、さらにA銀行の手持ちの現金がなくなることになり、ますます悪いうわさが流れます。完全に負のスパイラルです。

もちろん、上記のインターバンク市場でも悪いうわさは広まります。

「A銀行にお金を貸しても帰ってこないかもしれない」

つまり、A銀行にお金を貸す銀行が存在しなくなるのです。こうして、A銀行が支払不能に陥ったときに、銀行が倒産します。

公的資金の注入とは

銀行が危機に陥ったとき、よく言われるフレーズが「公的資金を注入し、銀行を援助する」というものがあります。これは簡単に言うと「皆さんが支払った税金を使って銀行を助ける」ということになります。方法としては、銀行の株式を政府系機関が購入することもあれば、政府から税金を渡された他の銀行がつぶれそうな銀行を買収するなどがあります。「公的資金」と名前が変わっていますが「税金」です。

なぜ銀行だけこんな素晴らしい救済が待っているのでしょうか。それは、銀行が社会的に重要な役割を担っていると思われているからです。つぶれたときの影響が大きすぎてつぶせないと言われているのです。「Too big to fail」というやつです。そのため、銀行は基本的にはアホなことが出来ないように規制などでガチガチに業務内容を固められているのです。

長くなりましたので、今回はここまでにします。次回は、投資銀行であるベア・スターンズについて書いていきたいと思います。

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