いきなりだが正直に言ってしまうと、僕は社会人として働くにつれて、ある種の息苦しさのようなものを覚えるようになっていった。それは、やることが膨大にあるため、毎日帰宅時には「これだけ時間をかけて仕事をしたのに、これといった結果は何も残っていないのではないか」と感じることが原因である。

毎日結構頑張って仕事をしているつもりでも、いざ自分がやったことを振り返ってみると、特に何も成し遂げていないように感じるのだ。様々なことに手を出しているのだが、それぞれについてほとんど仕事が進んでいる気がしない。はっきりいって、僕はマルチタスクというのが大の苦手だった。いろんなことをテキパキとこなすことが出来る人がいるのが信じられなかった。

 

そんなとき、偶然入った本屋で、今回紹介する本を見つけることになる。その名も「シングルタスク 一点集中術」だ。

この本を見たとき、買うのは若干ためらった。正直に言えば、マルチタスクの苦手意識を克服するためには、マルチタスクの方法に関する本を買うべきではないか、と思ったのだ。なので、とりあえずは少し立ち見してみることにした。そして、まえがきを読み終えて、目次を確認する。第1章:マルチタスクを封印する。

「おやおや、この本は僕が知っていること、つまりマルチタスクを行うことにより生産性を上げるということとは真逆のことを書いてあるようだ。」

一度読み始めると止まらなくなったため、その場で購入し、カフェに移動してさっそく読んでみた。

結果としては、本当に購入して良かったと思う。少なくとも、今後はマルチタスクが出来ないといって嘆くことはあまりなさそうだ。この本によると、脳はその構造上マルチタスクが出来ないようになっており、今目の前にあるものに全力で取り組み、集中することにより最も生産性を高めることが可能であるという。

考えてみれば、人間にマルチタスクが難しいのは、最近よく言われる「歩きスマホは危険」という一言だけでもわかるではないか。生まれてからこれまでかなりの経験を積んだ「歩行する」ということでさえ、スマホを触りながらではおぼつかないのが人間という生き物なのだ。それ以外のことをマルチタスクで行おうとすれば、無理が生じるに決まっている。

この本を読み終えてから、仕事は1つずつ集中して行うようになった。すると、帰宅する頃にはその日に取り組んだことが自分で納得できるようになりつつあるように思う。意識してPCでのチャットや、メールの確認回数を減らしているので、集中する時間が長くなっているようにも感じる。

これを続ければ、もう少し生産性の高い働き方ができるかもしれない。もし、僕のように1日の仕事終わりに、自分が何をしたのかをぼんやりとしか思い出せない人はぜひ1度手に取ってみてほしい。

ただ、最後の方は若干内容に失速感があったため、仮に5点満点でレビューを書くとすれば4点というところになると思う。