今回紹介する本は、ずいぶんと昔に購入していたのですが、割と分厚いのでなかなか手に取れずにいたものになります。結論としては、もう少し早く読んでいればよかったのですが・・・。板谷敏彦氏による「日露戦争、資金調達の戦い-高橋是清と欧米バンカーたち」になります。板谷さんとえいえば、「金融の世界史:バブルと戦争と株式市場」を読んだことがあり、その本が素晴らしいものだったので、他に何か著書はないのかとAmazonで調べて、この本にたどり着いたという経緯があります。実際に手元に届くと(冒頭にも書いてある通り)かなり分厚く、そこから読み始めるまでにかなりの時間が経過してしまいました。

【内容】

戦争に勝つために必要となる要素をおおざっぱに分類すると「ヒト・モノ・カネ」ということになりますが、この本はその中でも「カネ」に注目して書かれたものになります。日露戦争時に戦争を行うための資金が不足していた日本が、資金調達をするために欧米に高橋是清という人物を送り出し、日本国債を発行する過程というものを見事に時系列で捉えています。ただ事実を羅列するというものではなく、当時の手記、手紙、金融市場の指標などの客観的なデータから、高橋是清が資金調達に奔走する当時の状況を物語として見事に浮かび上がらせるものになっています。また、金融指標という客観的なデータから、当時の世界の人々が日露戦争についてどちらが有利と感じていたのか、また、日本の株式市場の数値を通して、日本人が日露戦争に対してどのように感じていたのか感じ取ることができます。

【感想】

まず、100年以上前に勃発した日露戦争時代に、ここまで国際金融が発達していたことに非常に驚きを感じました。金融と言えばリーマンショックが起きる前である20世紀後半から急激に拡大してきたイメージがありますが、すでに世界的なビジネスとなっていたのですね。また、現代でも世界的に展開している外資系の金融機関が、日露戦争当時からすでに世界展開を行っていることも垣間見ることができます。

この本は、ひとつの戦争における資金調達を、戦争における局面ごとに詳細に知ることができるため、金融業界にいる人にとっては非常に読み応えがある内容となっています。ただ、戦争における戦略論などについては一切書かれていないので、そういった方面を期待して読むと全くの的外れとなります。ただ、ひとつの戦争を金融という切り口から眺めることによって、非常にリアルなものとして書き出すことに成功していることは間違いありません。じっくり良書を読んでみたい人にはおすすめです。