日本国記

「誰が泳いで良いと言った!」

「しかし、海は綺麗であります!」

「バカタレ!!」

僕が祖父に戦争の記憶を聞いた時に祖父から聞いたエピソードの一部である。もちろん祖父が泳いでいる側の人間だ。台湾にいたときの話だと話していた。もちろんどこまで本当のことかわからないが、このエピソードは僕がこれまで読んできたどのような本とも異なっていた。例えば、日本軍は極悪非道でなんでもありだったという情報や、日本軍は規律がしっかりしていてほとんど問題を起こさなかったという情報だ。祖父の発言からは、割といい加減な人も軍隊にいたことが読み取れる。何度も言うが、これが事実かどうかは祖父にしかわからない。そして、そんな祖父はもうずいぶん前からこの世にいない。

子供のころから、どうして日本は周辺他国へ謝罪しないのだろうと不思議に思って生きてきた。また、欧米諸国が近代化をしてアジア、アフリカ諸国を植民地化することを「格好良い」と思い、新興国家の日本が欧米諸国のマネをするように韓国、中国に進出するのを「格好悪い」と思っていた。これはなぜだかわからない。なぜだかわからないが、同じことを行ってきた世界各国のうち、自分が住んでいる日本だけを悪い国だと思うようになっていた。今思うと、一人の国民を、ここまで諸外国に対して罪悪感を持つように教育できるシステムはよくできていると感心する。

大学生のときだっただろうか。僕は一冊の本に出会う。それが以下の本である。

なぜ手に取ったのか、今となっては思い出せない。だが、何からの理由により僕の手元にやってきて、僕はこの本を読んだ。読めばわかるが、それまで僕が頭に詰め込んでいた情報とはまるで違う内容だった。僕がこれまで「悪い」と思っていた日本人側の主張を聞いてみると、これまでの常識に対して別の側面が浮かび上がったのだ。日本だけが一方的に悪いということではないと考えるようになったのはそれからだ。

その日から、日本の歴史(特に幕末以降)について書かれた小説なども読むようになった。自分が住んでいる国の歴史くらい少しは多面的にみれるようになりたいと思ったのがきっかけだ。そんな中、自分の祖父に戦争のことについて聞いてみようと思い、実際に聞いてみたのが冒頭のエピソードとなる。他のエピソードとしては、韓国のことを「朝鮮」と呼んでいたのが印象に残っている。

ビックリするくらい前置きが長くなってしまったが、その流れの一環で今回読んだ本を紹介しようと思う。タイトルの通り、日本国記である。

きっかけは安倍総理のツイートである。たしか、年末年始の休養でゆっくりと本を読みますという画像の中にこの本があったのだ。一国の総理が読む本ということで、さっそく手に取ってみた。読み終わったのはずいぶん前なのだが、書評を書こうとしてずっと下書きで止まっていた。怠惰だ。

この本はこれまでの読書歴からいくと「日本は悪くない」という側に大きく寄った内容と言える。しかしながら、日本の歴史を物語のように読みたいという人にはぴったりな本となっている。かなり分厚いのだが、すらすらと読める。僕も半身浴しながら毎日読んでいたらすっと読み終わった。ただ、当然ながら冒頭の祖父のような人物は登場しなかった。

この本は、過去の僕のように「日本は悪い国だった」と思い込んでいる人に読んで欲しい。そういう人はこういう本をめったに手に取らないので難しいのだが。冷静に考えると、昔の日本人が極悪非道だというのであれば、僕の祖父も極悪な人間だということになる。だが、僕が思い出せる祖父には全くそのような面影はない。

彼が特殊だったのだろうか。今のところ、僕はそうは思わない。

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