米国公認会計士(USCPA)に合格し、Big4監査法人で働いてます。USCPA情報をメインにリアルな情報を記載。

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電子取引基盤

電子取引基盤とは

金融規制について、今回は「電子取引基盤」について書いていきたいと思います。電子取引基盤は「いかにも日本の官僚が考えました」という読みにくさと古臭さが伝わってくる名称ですね。英訳するとElectronic Trading Platform、つまりデリバティブ取引を行うプラットフォームのようなものをイメージしていただければわかりやすいと思います。

正確な例とは言えませんが、FXの取引を行っている人であればその取引画面、株式投資を行っている人であればその取引画面を想像してもらえればイメージしやすいと思います。まぁ、ネット上の取引所という感じでしょうか。では、なぜ取引プラットフォームである電子取引基盤が金融規制として取り上げられているのでしょうか。一旦、前回にも記載した金融庁によるG20サミットの合意を振り返ってみます。

店頭デリバティブ市場の改善:遅くとも2012年末までに、標準化されたすべての店頭(OTC)デリバティブ契約は、適当な場合には、取引所又は電子取引基盤を通じて取引され、中央清算機関を通じて決済されるべきである。店頭デリバティブ契約は、取引情報蓄積機関に報告されるべきである。中央清算機関を通じて決済がされない契約は、より高い所要自己資本賦課の対象とされるべきである。我々は、FSBとその関連メンバーに対して、実施状況及びデリバティブ市場の透明性を改善し、システミック・リスクを緩和し、市場の濫用から守るために十分かどうかにつき、定期的に評価することを要請する。

出典:金融庁HP

上記のうち、標準化されたすべての店頭デリバティブ契約は、取引所又は電子取引基盤を通じて取引という箇所がありますが、これは世界各国の金融規制当局(日本では金融庁)に、一定の店頭デリバティブ取引については電子取引基盤を通じて取引を行わせるような規制を導入するように要請しているものになります。どうしてこのような規制を導入することになったのかを説明するために、リーマンショックが起こった時の店頭デリバティブ市場の慣行についてみていきます。

規制導入前

リーマンショックが起こる前、店頭デリバティブ取引は、基本的に担当者によって電話やFAXを通じて行われていました。「店頭」とは一見するとイマイチわかりにくい表現なのですが、取引所で取引するというものではなく、直接取引相手に連絡して相対で取引を行うことを意味します。下記に取引所を通じた取引と、相対取引の差を記載しておきます。

見えにくいですが、左が取引所を通じた取引、右が相対(OTC)での取引です。左側の図を見ると、取引所に取引が集約されていることがわかります。株式の売買を行う証券取引所などを想像してもらえればわかりますが、株式は誰かから直接買い付けるということはほとんどなく、取引所に購入したい株を注文し、取引所がその株式を売却したい人の注文と突き合わせて、取引が成立するという形式になっています。そのため、取引所には「誰が」「いつ」「何を」「売った」「買った」という情報がクリアに集計されていくことになります。それとは正反対なのが、当時のデリバティブ市場で行われていた取引でした。上の図の右側を見てもらえればわかりますが、当時、基本的にデリバティブ取引を行う場合は、直接他の金融機関等に連絡を取り、そのまま契約を行うという形式になっていました。その相対取引を複数の金融機関が行えばどうなるのかを図で表したのが以下になります。

家のPCでパワポで作成してみたけど雑だ・・・。まぁ、このような感じになるわけです。全員がバラバラに取引を相対で行っている場合、当局(ここでは金融庁)にとって、誰が誰と取引をしているかの把握が困難ですね。このことが、リーマンショックが発生した際の被害を拡大する原因になってしまいました。

店頭取引の弱点

店頭取引は、取引したい相手に気軽に電話やFAXを行い取引を執行するだけなので、楽と言えば楽なのですが、その取引情報を俯瞰的に把握することが難しいという欠点を持っています。例えば上記の取引所を通じた取引を見てもらえればわかりますが、仮に金融庁が取引の実態を把握しようとした場合、取引所を調査するだけで全ての取引情報を把握することができます。全ての取引が取引所に集約されているためです。ところが、リーマンショック当時のデリバティブ取引にはそういった機能がなかった。そのため、いざリーマンショックが発生した際に、それぞれの金融機関の取引実態を当局が把握しようとしたのですが、あまりにもデリバティブ取引がバラバラに行われていたために、取引の実態を把握するだけで相当な時間がかかることになりました。そのため、迅速な対応策が打ち出せずに被害がどんどん拡大することになったのです。

電子取引基盤の導入

これらの経験から、デリバティブ取引も株式取引のように、取引所のようなもの(これが電子取引基盤です)を通じて取引を行い、各当局が取引実態を迅速にできるようにするべきだ、という結論に至りました。これが、冒頭で記載したG20合意の一部になります。つまり、電子取引基盤とは、これまで相対で行っていたデリバティブ取引の内、流動性が高い商品については共通のプラットフォームで取引を行わせることにより、透明性を高める規制ということになります。

このように、当局は電子取引基盤を確認すれば、全ての市場参加者が行っている取引を把握することが可能です。これが、電子取引基盤という規制が導入される意味合いになります。しかしながら、注意点としては基本的にデリバティブ取引というものは複雑な商品であるため、デリバティブ商品の中でも流動性があり、たくさんの市場参加者が取り扱っているようなものしか電子取引基盤で取り扱うことができません。そのため、全ての店頭デリバティブ取引が電子取引基盤を通じて取引が執行されるわけではありません。

以上で、電子取引基盤の説明を終わりたいと思います。

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