USCPAの勉強。無形資産について。

Intangible Asset(無形資産)

前回まではFixed Asset(固定資産)について書いてきました。今回からは、Intangible Asset(無形資産)についてみていきたいと思います。貸借対照表における資産の部に計上される勘定科目となります。Intangible Assetは、Intangibleの意味である「触れられない」という点からイメージできると思いますが、僕たちが実際に触れることのできない資産になります。どのようなものかを具体的な勘定科目で見てみると、Patent(特許権)、Goodwill(のれん)などがあげられます。直接触ることが出来る機械などの資産とは違い、「お、これは中々キレイな特許権ですね。」と言いながら特許権そのものに触ることはまず無理ですよね。ただ、特許そのものは企業に将来に渡って収益をもたらす源泉になります。こういった資産を無形資産と言います。

Intangible Assetの論点

では、Intangible Assetの論点についてみていきます。USCPAの試験として論点になりやすいのは、Intangible Assetを取得したときの計上、償却、そして減損になります。それぞれについて説明していきます。

Intangible Assetの取得

では、Intangible Assetの会計処理について確認していきます。ここでは、特許権を購入した場合の仕訳を例としてあげます。

【例】
1月1日、特許権を100,000ドルで現金により購入した。

■仕訳
Dr Patent 100,000
Cr Cash 100,000

このように、単純に購入した金額で特許権を計上します。次に、Intangible Assetの計上後に何もしなくて良いのかという問題があります。実は無形資産に関して、固定資産と同様に計上後は償却や減損という処理が必要になります。注意点として、無形資産はUseful Life(有効期間)が明確ではない場合は、償却処理は行いません。

Intangible Assetの償却

Intangible Assetの償却について、その資産のUseful Lifeが確定している場合、固定資産の減価償却の箇所でも確認した「定額法」によりUseful Lifeに渡って償却を行います。Intangible Assetの償却についての特徴としては、以下の2点があげられます。

  1. 直接法で償却
  2. 残存価額は考慮しない

こちらの特徴を踏まえて、先ほど取得したPatent(特許権)を償却する処理を考えてみます。

【例】
12月31日に、1月1日に購入した特許権を償却する。この特許権のUseful Lifeは10年である。

■仕訳
Dr Amortization expense 10,000
Cr Patent 10,000

上記仕訳の勘定科目を見ればわかると思いますが、固定資産のようにAccumulated Amortization(減価償却累計額)といった勘定科目を使用せず、直接Patent(特許権)を減少させています。これが「直接法での償却」になります。加えて残存価額がないため、10年の場合は購入金額から単純に10で割った金額をそのまま償却金額にしています。

Intangible Assetの減損

Intangible Assetは、償却とは別に「減損」を行う必要がある場合があります。こちらは減損会計と呼ばれる分野のため、ここでは軽く紹介する程度にしておきます。Intangible Assetに対して減損の兆候があった場合、「Intangible Assetの価値」に対する減損の有無を検討する必要があります。その兆候の例として、以下のようなものがあげられます。

  1. その資産(もしくは資産グループ)の市場価値の下落
  2. その資産(もしくは資産グループ)に対する物理的な変化が発生した(使用しなくなった又は使用方法が変更されたなど)
  3. 法的又は事業の環境が不利に変化した

つまり、Intangible Assetがこれまでのように価値を生み出せるかあやしくなったとき、減損の兆候があると捉えることになります。

仮に上記のような減損の兆候が存在すると認められた場合、当該Intangible Assetにおける将来キャッシュフロー(但し、現在価値に割り引かない)の見積もりが必要となります。この見積もった将来キャッシュフローの純額と帳簿価額を比較して、もし将来キャッシュフローのほうが低いとなった場合、減損を認識する必要があります。これら、減損のステップをまとめると

  1. 減損の兆候があるかチェック
  2. 減損兆候があった場合、将来キャッシュフローの純額を計算
  3. 将来キャッシュフローの純額が帳簿価額より低かった場合、減損処理

となります。次に、Intangible Asset(無形固定資産)に関するR&D(研究開発費)についてみていきたいと思います。

R&D(研究開発費)とは

R&Dとは、Research and Development Costのことで、日本語では「研究開発費」になります。企業活動を続けるためには新商品の開発や新技術の研究などが必要となります。その開発や研究を行った際に発生するような費用のことをR&D(研究開発費)といいます。

会計におけるR&Dの原則

会計処理に関するR&Dのルールは割と単純です。基本的に、全ての研究開発費について、その発生した会計期間でExpenseとします。「収益にかかった費用は該当する期に計上する」という会計の考え方に基づくと、研究開発費にかかったコストというのは、ある程度は資産として計上し、ある程度は費用として計上するという風に思われるかもしれません。しかし研究開発費については、いつ時点で収益になるかハッキリと断定することが困難な上、その費用がどのように収益に結びついているかを確認することがほぼ不可能なため、支払った分だけその期に全て費用として計上することになります。

USCPA試験におけるR&Dの論点

USCPA試験におけるR&Dに関する問題として典型的なのが「期中に様々な活動を行いましたが、さて今期のR&Dはいくらでしょう」というものです。この問題を解く際に重要となるのが、どの活動がR&Dに含まれるか否かの判断となります。ここでは、R&Dの活動において、わかりやすいComputer Softwareの開発を例にして、どの活動がR&Dに該当するかを確認してみます。重要となるのは、どの活動がR&D、つまり費用として計上され、どの活動がCapitalize、つまり資産として計上されるかの判断になります。

R&D(研究開発費)の範囲

Computer Softwareを具体例にあげると、R&D(研究開発費)に含まれる範囲は、そのComputer Softwareの研究開発を開始してから、「Technological feasibility」が達成されるまでとなっています。「Technological feasibility」は、わかりにくいですが日本語にすると「技術的に実現可能」となります。よくわからない開発をしているというよりは、技術的にはもう販売が可能であるというとイメージしやすいかもしれません。USCPA試験に出題される形式でいうと、Technological feasibilityはプログラムのモデルが完成したときに達成されたと考えられます。つまり「Technological feasibility」が達成した後に費やされた金額は一定の状態まで全てCapitalize(資産計上)されます。

Capitalize(資産計上)の範囲

上記のとおり、Computer Software の開発を通して「Technological feasibility」が達成された後に係る金額は、Capitalize(資産計上)を行います。そのCapitalize(資産計上)されたComputer Softwareは、一般的な無形資産と同様にAmortizationをすることによって将来に渡って費用計上されます。では、次の論点として、このCapitalize(資産計上)はどの範囲まで行われるのかということになります。Capitalize(資産計上)が行われるのは、そのComputer Softwareが「販売可能」な段階に入るまでとなっています。そのため、販売が可能になった後のComputer Softwareを量産するために費やした金額や、量産されたComputer Softwareをパッケージにつめるコストなどは、全てInventory(棚卸資産)への計上となります。

上記の流れについて、まとめると以下のようになります。

  • R&Dの範囲
    「Technological feasibility」が達成されるまでの金額
  • Capitalizeする範囲
    「Technological feasibility」の達成後から、「Marketing」までの金額
  • Inventoryとなる範囲
    Marketing以降にかかる金額

その他のR&Dの論点

R&Dのその他の論点としては、他社に依頼を受けて行ったR&Dと、R&Dのために購入した設備の取り扱いになります。それぞれについて説明していきます。

外部に向けたR&D

USCPA試験におけるR&Dの論点として、自社以外のために行うR&Dも論点となります。こちらは、他社や公的機関から依頼を受けて研究開発を行うことを意味します。その研究開発によって他社からの収益が確認可能なため、こちらにかかった金額は資産として計上し、その後に収益と対応するように費用として計上していきます。Amortization expenseですね。但し、USCPAの試験においては後述する「購入したR&D用の設備」のほうが重要となります。

購入したR&D用設備

R&Dのために他社などから購入した設備は、基本的に購入した期にR&D Expenseとして全額費用計上を行います。この処理は購入した設備がどれだけ高額でも変わらず、一括でその期に費用計上ということです。ただし、その購入した設備が研究開発だけでなく、他の業務にも使用できる場合(これをAlternative Future Useといいます)には、設備の購入であるため資産としての計上となります。会計処理としては通常の固定資産(Fixed Asset)のように減価償却を通して費用計上します。

※Alternative Future Useが可能な設備の費用に関しては、その設備がR&Dのために使用されているときはその設備に関する減価償却費がR&D expenseとして計上されます。そのR&Dが終了し、その後に製造活動等に使用された場合、その減価償却費はManufacturing Overhead(製造間接費)として製造原価の一部となり、最終的に商品が販売された際にその売上原価として費用に計上されます。

以上で、Intangible Asse(無形資産)の説明を終わりたいと思います。