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棚卸資産3

USCPAの勉強。棚卸資産についてその3.

Inventoryの評価方法について

前回の「棚卸資産その2」ではInventoryの評価方法のうち、4つの基本的なものと、LCMについて見てきました。今回は、Inventoryの評価方法のひとつである、Retail method(売価還元法)について見ていきたいと思います。どんどんややこしくなって、困ってしまいますね。

Retail method(売価還元法)とは

Retail methodとは、別名Inventory estimation methodとも呼ばれ、estimationが示す通り期末のEnding Inventory、それに続くCOGS(売上原価)を推定する方法となっています。

こちらは、InventoryをCost(原価)ではなくRetail value(売価)で評価しておき、その金額からCost/Retail valueの計算式で求められる「原価率」をかけることによって最終的なEnding inventoryの原価とCOGSを簡易的に求める方法になります。大量の種類の商品を抱え、売値が常に記録されているようなスーパーやデパートなどの小売店で採用されることがあるようです。

このことから、Retail methodでEnding inventoryの金額計算に必要な情報を取り出してみると

  1. Cost/Retail valueで求められるCost/Retail ratio(原価率)
  2. Retail value(売価)で測定したEnding inventoryの金額

の2点ということがわかります。2に1をかけることによって、期末のInventoryのCostを導き出すことができます。

Cost/Retail ratioの求め方

原価率は記載の通り、CostからRetail valueを割ることによって求めることが出来ます。ところが、実際の試験ではCostの箇所の情報が不十分なことが多く、以下で説明する計算などが必要になってきます。さらに、Cost/Retail ratioを求める際に、Retail valueの評価方法(つまり計算式の種類)が4つも存在しているのです。では、さっそく説明してきます。

まず、大きく分けて2つの方法「Cost method(原価法)」と「LCM(低価法)」に分けられます。ここでの違いは以下となります。

  • Cost method:値下げ額を含める
  • LCM:値下げ額を含めない

つまり、Cost methodはRetail valueの値下げ額を計算に含めますが、LCMでは値下げ額を計算に含めないことになっています。さらに、この2つの計算方法はさらに2つの条件で分けることになっています。それが「Average method(平均法)」と「FIFO(先入先出法)」の2つです。それぞれの違いを見ていきます。

  • Average method:Beginning Inventoryを含める
  • FIFO:Beginning Inventoryを含めない

この2つの違いはBeginning Inventoryを含めるかどうかなのですが、Average methodは全体の平均を考慮する必要があるのでBeginning Inventoryも計算に含めることになります。FIFOは以前に説明したとおり、最初に仕入れた商品から売れていくという仮定の方法なので、期末には期首在庫であるBeginning Inventoryは存在しないということになります。そのため、計算にBeginning Inventoryは考慮しないことになっています。

Cost/Retail methodの種類まとめ

以上、色々なことを書いてきましたが、それぞれについて計算式をまとめてみたいと思います。「Cost method」「LCM」「Average method」「FIFO」を全て組み合わせて、以下のような種類が用意されています。

・Average Cost(平均法による原価法)
こちらはCostなので値下げ額を含めて、さらにAverageなのでBeginning Inventoryも考慮して計算する方法となっています。

・FIFO Cost(先入先出法による原価法)
こちらはCostなので値下げ額を含めることになりますが、FIFOなのでBeginning Inventoryは計算に考慮しない方法となっています。

・Average LCM(平均法による低価法)
こちらはLCMなので値下げ額を計算に含めず、AverageなのでBeginning Inventoryは考慮して計算する方法となっています。なぜかこちらの方法には「Conventional Retail Method」という別名が用意されています。つまり、試験によく出ます。

・FIFO LCM(先入先出法による低価法)
こちらはLCMなので値下げ額を計算に含めず、さらにFIFOなのでBeginning Inventoryも考慮しないという方法になります。

さて、色んな計算の種類を見てきたわけですが、これではちょっとわかりにくいので、実際の数字を使ってRetail methodを見ていきたいと思います。

Retail methodの計算

USCPAの試験では以下のような情報を与えられることが多くなっています。全ての計算方法の中身を満たす情報が入っていますが、試験で求められている計算種類に必要な箇所だけ使用して回答しましょう。

・Costの情報
Beginning Inventory:36,000ドル
Purchase:180,000ドル

・Retailの情報
Beginning Inventory:90,000ドル
Purchase:330,000ドル
Markup:30,000ドル
Markdown:60,000ドル
Sales:270,000ドル

このように、USCPAの試験ではCostの情報が不十分な状態で出題されることが多くなっています。そして、問題文の中に「この会社はAverage LCM(他の方法の場合もあり)を使用してInventoryを評価している」という記載がなされています。ここからRetail methodを使用して、Ending inventoryとCOGSを計算していきます。

この情報から計算していく前に、もう一度Retail methodに必要な情報を復習していきます。以下の2つになります。

  1. Cost/Retail valueで求められるCost/Retail ratio(原価率)
  2. Retail value(売価)で測定したEnding inventoryの金額

まずは全ての方法に共通する2の方から計算してきます。

Retail valueでのEnding inventoryの金額計算

まずは情報が充実しているRetailの情報を使用して、こちらを計算してきます。この作業は4つの計算種類のどの方法を使用しても必要となる作業で、こちらのEnding inventoryを計算した金額にCost/Retail ratio(原価率)をかけてCostでのEnding inventoryの金額を推定するのです。では、計算式をみていきます。

Beginning Inventory+(Purchase+Markup-Markdown)-Sales

この計算式に当てはめるとRetail valueでのEnding inventoryが計算できます。注意点としては、Ending inventoryを求める際は値下げ額やBeginning inventoryは必ず考慮するということです。繰り返しになりますがこちらはCost/Retail ratioを求めているわけではありませんので、この区別が重要です。実際に計算を見てみると

90,000+(330,000+30,000ー60,000)ー270,000=120,000

となります。Retail valueでのEnding inventoryは120,000ドルということが判明しました。この金額に4種類存在するうちの試験で問われているCost/Retail ratioをかけることによって、CostでのEnding inventoryを算出するのです。

Cost/Retail ratioの計算

4種類もあってややこしいのはこちらになります。4種類の方法全ての原価率を見ていきます。

・Average Cost
こちらの方法は、Costなので値下げ額を含め、さらにAverageなのでBeginning Inventoryも考慮する方法となっています。それを踏まえると

(36,000+180,000) / (90,000+330,000+30,000-60,000) ≒ 55%

となり、Cost/Retail ratioは約55%ということがわかります。下線を引いているのが考慮されている金額となります。この55%をさきほど求めた120,000ドルにかけて

120,000×55%=66,000ドル

となり、Average CostでのCostのEnding inventoryの金額は66,000ドルとなることがわかります。

・FIFO Cost
こちらはCostなので値下げ額を含めますが、FIFOなのでBeginning Inventoryを考慮しない計算となっていました。それを踏まえると

180,000 / (330,000+30,000-60,000) = 60%

となり、FIFO CostでのCost/Retail ratioは60%ということがわかります。下線を引いているところが考慮している箇所ですが、Beginning Inventoryが計算式から消えていることがわかると思います。そのことにより原価率が変化するのです。この60%を先ほど求めた120,000ドルにかけて

120,000×60% = 72,000ドル

となり、FIFO CostでのCostのEnding inventoryは72,000ドルということがわかりました。

・Average LCM(Conventional Retail Method)
こちらはLCMなので値下げ額を含めず、AverageなのでBeginning Inventoryを考慮する方法となっています。それを踏まえると

(36,000+180,000) / (90,000+330,000+30,000)= 48%

となり、Average LCMでのCost/Retail ratioは48%ということがわかります。下線を引いている箇所が考慮しているところですが、Markdownが消えていることがわかります。この48%をさきほど求めた120,000ドルにかけて

120,000×48%=57,600ドル

となり、Average LCMでのCostのEnding inventoryの金額は57,600ドルということがわかりました。

・FIFO LCM
こちらはLCMなので値下げ額を含めず、FIFOなのでBeginning Inventoryも含めないという方法でした。それを踏まえると

180,000 / (330,000+30,000)= 50%

となります。値下げ額もBeginning Inventoryも含めないのであっさりした計算式になります。FIFO LCMでのCost/Retail ratioは50%ということがわかります。この50%にさきほど求めた120,000ドルをかけて

120,000×50%=60,000ドル

となり、FIFO LCMでのCostのEnding inventoryは60,000ドルということがわかりました。

Retail methodまとめ

これらのことから、Retail methodはCost/Retail ratio(原価率)の計算種類を全て覚えていないと正解を導けないことがわかります。重要なポイントとしてはRetail valueでのEnding inventoryを計算するときは全てを考慮して計算する。Cost/Retail ratioを計算するときは会社が採用している方法で計算するという違いがあるということです。

こちらのRetail methodも最初は複雑に感じるかもしれませんが、何度も問題を解いているとパターンが読めてくるので、何度も問題を解いて全部のパターンを覚えてしまいましょう。

以上で、棚卸資産についてを終わりたいと思います。

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