なぜアドバイザリー部門は激務なのか

さて、久しぶりにブログを書こうと思うわけですが、まず久しぶりの更新となったことを謝罪したいわけです。とは言っても、ブログのネタがその辺りに転がっているわけでは無いし、仕事が割と忙しくてなかなかブログに対する時間が取れないという事情もあるのです。

そこでふと思いました。「なぜ自分はこんなに忙しいのだろう」と。僕は監査法人で働いているのですが、監査部門に所属しているわけではなく、いわゆるアドバイザリー部門に所属しています。激務と言われる監査法人の中でも、アドバイザリー部門はさらに激務よりの部門である気がします。正直監査に携わったことがないので、この辺りは自分の感覚になってしまいますが。

全然話は変わるのですが、僕は「コンサルタント」と言う単語が嫌いです。「いや、あなたアドバイザリー部門でしょ?コンサルと何が違うの?」と聞かれると困るのですが、コンサルは上から目線で話して終わり、アドバイザリーはクライアントと一緒になって悩み事を解決するイメージを勝手に持っています。完全に偏見なのは理解しています。なので、僕は決して自分のことをコンサルとは言いません。

話を戻しますが、「なぜアドバイザリー部門はこんなに忙しいのか」と同僚と軽く話したときに「あ、これをブログのネタにすれば良いじゃん」と思いついたわけです。すでに考えた内容なので書きやすく、読者にアドバイザリー部門について伝えられる、まさに一石二鳥なわけです。

ということで前置きが長くなりましたが、早速、なぜアドバイザリー部門が激務になりやすいのか書いていきましょう。

理由1. 専門性が高い

皆さんは仕事をしていて、わからないことがあったらどうするでしょうか?先輩に相談する、インターネットで調べる、過去に同じことが無かったか古いファイルを探す等、色んな方法があると思います。これらに共通することは「なんとかして解決しよう」という姿勢ですね。ところが、社内のリソースでは解決できないどうしようもないことが世の中にはあるのです。インターネットや本には記載があるのですが、実際の実務に落とし込むにはどうすればよいか等、わからないことは山ほどあるわけです。そういったときに、社外のリソース(つまり我々)にお声がかかるわけです。

では、クライアントから依頼を受けた我々の視点はどうでしょうか。正直、とあるクライアントから受けた依頼について、すでに別のクライアントへ同様のサービスを提供している場合、そのノウハウを生かせばよいだけなのですが、言うは易く行うは難しなわけです。1つとして同じ会社はなく、クライアントの実態に沿ったサービスを提供する必要があるので、ノウハウをうまくクライアントへ当てはめる作業が必要になります。

さらに、我々全員がそのノウハウを知っているわけでもなく、監査法人内は情報の引継ぎがお世辞にもうまくないので「〇〇さんは知っているけど、残り全員知らない」といった状態が当たり前のように発生します。しかし、クライアントからするとそんなの知ったことではなく「当然全員知ってるよね」というスタンスなので、必死こいてその分野を調べて一気に詳しくなる必要があります。アドバイザリー部門の業務を一般化すると、以下のような流れになるわけです。

ノウハウの吸収+クライアント実務の把握⇒クライアント実務への落とし込み

このように書くと簡単そうですが、実際にやってみると、これがなかなか大変なわけです。ダラダラとやるわけにもいかず、期日が設定されているので、短期間で「依頼してよかった」と思われるためには相当な労力が必要となります。それを達成するためには、1日に使える時間の大半を仕事に費やすのが近道なわけです。

理由2. ルーティーンではない

さて、理由1とつながる話なのですが、上記のような専門的な業務は、基本的にはルーティーン業務にすることができません。中には継続的な業務に移行する案件もありますが、そうでない業務も多いです。問題は解決すると「はい、ありがとう!」で終わりですからね。監査であれば基本的な流れが決まっており、その流れに沿って業務をする必要があり、繁忙期と閑散期がハッキリと区別できます。一方、アドバイザリー業務に関しては、常に新しいクライアントの「困った><」を探し続ける必要があります。そのため、毎回業務が始まるとノウハウの吸収+クライアント実務の把握⇒クライアント実務への落とし込みの流れが必要となるわけです。

つまり、常に新しい分野を勉強し続け、どうすればうまくいくかを試行錯誤し続けなければならないわけです。これは別に監査部門の人がそうしていないというわけではなく、アドバイザリー部門は特にそうですよ、ということを意味しています。簡単にいうと、以下のようなことになります。

  1. 問題解決の依頼
  2. 必死こいて解決
  3. 問題解決の依頼
  4. 必死こいて解決

上記のうち、1と3の問題はそこまで関係していないことが多いのです。つまり、全力でその分野について調べる作業が案件ごとに必要になるわけです。

理由3. 納期が短い

世の中の困ったことは、ゆっくりと登場してくれることはあまりありません。もちろん会計基準の適用など、適用開始時期が決まっていることもありますが、これに関しても監査法人が「早くから導入準備しないとマズいっすよ」と営業したとしても、クライアントが「そうだね」と言わない限り仕事は始まりません。そして、クライアントが「そろそろ準備するか」と思うころには、監査法人としては「遅すぎて今から準備とか到底無理なんだけど…」となるのです。ただ、お金のためにバカなパートナーが「いけまーす(^ ^)」と回答するので、下っ端の我々は短い納期で導入する必要があるわけです。納期が短いということは、生産性をあげるとか綺麗事は色々並べられますが、結局のところ行き着く先は「1日の働く時間を伸ばして対応」するということになります。

また、異なるタイプの話として、アドバイザリー業務は、クライアントが「これ、ピンチじゃないか?」となった段階で相談を受けることも多いのです。例えば、金融規制の対応プロジェクトに携わっているとして、クライアントから以下の相談がきたとします。金融規制はなじみが無いと思いますが、激務になる具体例としてわかりやすいので取り上げます。

「うちのシンガポール支店の担当から、欧州の金融機関とデリバティブ取引をしたいと連絡がきたんだけど、これって大丈夫ですかね?明日には支店に回答してあげたいから、ちょっと教えて(^^)」

「ちょっと」といえば仕事が楽になるかもしれませんが、この時点で期限が1日の仕事が発生したことになります。この時点で調べるべき情報は少なくとも以下になります。

  • クライアントのステータス
  • 取引相手のステータス
  • デリバティブ取引の種類
  • 日本の金融規制
  • 欧州の金融規制
  • シンガポールの金融規制

本来はクライアントと取引相手のステータスによってもっと詳細に調べる内容が変化するのですが、これらを踏まえて「取引してOKです」「取引したら規制違反です」などの回答を用意しなければなりません。上記の例では1日の猶予がありますが、たまに「もう取引しちゃってた><」みたいな相談が来ることがあり、その場合は迅速に回答が必要となります。ちなみに先輩は、有給を取って彼女とディズニーに行っているときにクライアントから「NY支店が〇〇と取引しちゃってたらしい!大丈夫かな><」と電話が来てました。ずいぶん昔の話ですが。

まとめ

最後に、なぜアドバイザリー部門が激務になりやすいかをまとめますと、専門性が高く、クライアントへ応用させるには労力が必要となること、ルーティーン業務が少なく、常に新しい分野の業務になりがちなこと、納期が決まっておらず、さらに短い期限の突発的な依頼が多いことがあります。一見するとしんどいだけのように見えますが、次々と新しいことを身に着けられるので、成長したい人にはピッタリの部門だと言えます。もちろんこう言った業務ばかりではなく、ある程度決まった業務をこなすプロジェクトもあります。オチにとんでもないことを書きますが、要するにアサインされるプロジェクト次第というわけです。少しでもアドバイザリー部門のことを知っていただけたのであれば幸いです。

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