USCPAの試験範囲について勉強していきます。今回はFARのAccounts Receivable(売掛金)について書いていきます。前回の「現金及び現金同等物」と同様に、こちらも非常に長い記事となっていますが、論点を抑えると得点源にしやすい分野であると思います。

Accounts Receivable

今回は、Accounts Receivable(売掛金)についてです。カテゴリーは貸借対照表の資産の部になります。USCPA試験における重要論点はBad Debt(貸倒)に対するAllowance(引当)になるのですが、論点に入る前にまずはAccounts Receivableとは何かについて見ていきます。

Accounts Receivableとは

Accounts Receivableとは、日本語でいうと「売掛金」となりますが、何が何だかわかりませんね。そこで、英単語からそのままイメージしてもらえばわかりやすいと思います。Accountは「勘定」であり、Receivableは「Receive:受け取る」と「able:可能」で「受け取ることが出来る」であり、これらを合わせて「受け取ることが出来る勘定」となります。将来何か(ほぼ現金)を受け取ることが出来る勘定科目ということです。

なぜこのような勘定があるのかというと、実際のビジネスでは「現金でのやり取り」というものはほとんど行われておりません。基本的に信用で成り立っているため、現金で取引は行わず、モノが売れたとき又はサービスを提供したときは、請求書を相手方に発送することになります。その請求書に「翌月末までにお支払いください」と書いており、その翌月末(具体的に言うと入金があるまで)までに売り上げた側で計上しておくのがAccounts Receivableとなります。受け取ることが出来る勘定と言うことですね。

Accounts Receivableの計上

もう少し具体的に見ていきます。例えば、何か100ドルのモノを売り上げて、その際に請求書を発送したとします。そのときの仕訳は以下のようになります。

Dr Accounts Receivable 100
Cr Sales 100

売上時にすぐに入金があるわけではないので、まずはAccounts Receivableを計上します。そして、請求書の期限が来て、先方からの入金があった場合に以下の仕訳を切ります。

Dr Cash
Cr Accounts Receivable

このように、Cashの入金処理の仕訳を切り、Accounts Receivableを打ち消します。一旦Accounts Receivableをクッションとして、Cashを回収するのが一般的となります。※もちろん、売り上げと同時に現金が入金されるスーパーなど、例外の業界もあります。

では、Accounts Receivableの概念が分かったところで、Bad Debt Expense(貸倒損失)についてみていきたいと思います。Accounts Receivableの重要論点はAllowance(引当金)なのですが、その前にBad Debt Expenseを理解しておいた方がスムーズです。

Bad Debt Expense(貸倒損失)

Accounts Receivableを常に回収できれば文句はないのですが、残念ながら支払う約束をした人が100%払ってくれるかというと、現実はそうでもありません。払うといった期日までに相手が夜逃げしたり、倒産したりする可能性もあります。その場合に計上する必要があるのが、Bad Debt Expense(貸倒損失)になります。つまり、本来は現金を回収出来るはずだったAccounts Receivableが、相手の倒産など何らかの理由で回収できなくなった場合、それを費用計上する仕訳となります。以下では、モノを売ってAccounts Receivableを計上する仕訳からBad Debt Expenseの計上までの流れを見ていきます。

1.A株式会社に100ドルの商品を掛け(on account)で販売した。
Dr Accounts Receivable
Cr Sales

2.A株式会社の倒産が発覚した。1のAccounts Receivableは回収できないことが判明した。
Dr Bad Debt Expense
Cr Accounts Receivable

このような流れになります。2の仕訳で、現金をもらう権利であったAccounts Receivableを取り消して、費用であるBad Debt Expenseを計上することになっています。悲惨ですね。

Direct Write-off Method

このように、回収できないことが判明したAccounts Receivableに対して直接Bad Debt Expenseを計上する方法をDirect Write-off Method(直接減額法)と呼びます。現金が回収できないと分かった時に、その対象相手からのAccounts Receivableを直接減額する方法なので、このように呼ばれます。一見すると合理的な方法に思えますが、実は会計的には非常にマイナーな手法です。会計の原則に合致していないので、試験にもあまり採用されることはありません。

Direct Write-off Methodの弱点として、例えば、上記2つの仕訳のうち、1つめの売上計上が2014年に行われたもので、2の倒産の発覚とそれに伴うAccounts Receivableの減少とBad Debt Expenseの計上が2015年に行われた場合、2014年には売上だけが計上されて、2015年には費用だけが計上されることになります。2014年の財務諸表は良く、2015年の財務諸表は悪く見えるわけです。収益と費用がねじれているので、これでは良くありませんというのが会計の原則です。これを解消するために、Allowance Methodという方法が編み出されました。これがAccounts Receivableの中で最も重要なトピックになります。

Allowance Method(引当金法)

Allowance Method(引当金法)とは、売上が発生したのと同じ年に、貸し倒れるだろうと思われる費用を実際に貸し倒れていないのにも関わらず予測してBad Debt Expenseを予め計上しておく方法になります。この予想に使用されるのが、過去の実際に発生した貸倒率などになります。この際、USCPAの試験では2つの方法が肝になります。絶対に記憶してください。

  1. Percentage of Sales Method
  2. Aging Method

1つめのPercentage of Sales Methodは、Income statement approachとも呼ばれます。2つめのAging Methodは、Balance sheet approachとも呼ばれます。この理由は以下で説明しますが、USCPA試験を受ける方は確実にここは抑えて得点源にしましょう。様々な組み合わせで問題となって出題されます。では、ひとつずつ説明していきます。

1.Percentage of Sales Method

Income statement approachになります。こちらは比較的シンプルな方法です。名前の通り、売上高、つまりSalesに一定の割合をかけた数字をBad Debt Expense及びAllowanceとして計上する方法になります。Income statement(損益計算書)に計上されるSalesを起点に考える方法なので、Income statement approachと呼ばれます。実際の問題文には以下のような文言が記載されることが多いです。

ABC Company estimates 2% of credit sales will not become collectable.

下線を見ればわかりますが、CreditによるSalesの2%が貸し倒れると予想しているわけです。そして、試験問題にはSalesがいくらだったかということが書かれています。仮にSalesが1,000,000ドルだったとすると、以下の仕訳が必要になります。

Dr Bad Debt Expense 20,000
Cr Allowance for doubtful accounts 20,000

1,000,000ドルの2%ということで、20,000ドル分のAllowance(引当金)を計上することになります。実際には貸し倒れていませんが、Bad Debt Expenseを予想で計上することになります。

Percentage of Sales Methodの注意点としては、Creditの売上にだけ予想貸し倒れ率をかけるということです。現金売上、つまりCash Salesが書いてあっても計算には考慮しないでください。ひっかけポイントです。Cash Salesということで、最初から現金は回収できているSalesになります。では次に、Aging Methodについて説明していきます。

2.Aging Method

Balance sheet approachになります。概念は上記のIncome statement approachと全く同じなのですが、ほんの少し予想貸し倒れ率をかける対象や、その結果の数字に対する扱い方が違います。

こちらはAccounts Receivableの残高に、予想貸し倒れ率をかける方法になっています。その計算式で得られた結果をBalance Sheet(貸借対照表)に乗せる金額とするものになります。ここに注意が必要です。

仮に予想貸し倒れ率が2%、期末日のAccounts Receivableの残高が1,000,000ドルだったとします。この場合、計算結果は20,000ドルとなるのですが、ここからPercentage of Sales Methodと異なります。

仮に、Allowanceの残高がすでに3,000ドル残っていた場合、Aging Methodの場合は計算結果の20,000ドルとなるように仕訳を切る必要があるため、下記の仕訳を切ることになります。

Dr Bad Debt Expense 17,000
Cr Allowance for doubtful accounts 17,000

これで、既に残っていた3,000ドル分のAllowanceと今回計上したAllowanceを足して20,000ドルとなります。1つめのPercentage of Sales Methodはかけた結果の金額をそのまま計上していましたが、Aging Methodの場合は最終目標値が計算結果となるという違いがあります

この違いは最初はどちらがどちらの結果だったか混乱するかもしれませんが、問題集の問題を解きまくっていればすぐになれて、問題文を見た瞬間にどちらの方法かわかるようになるので、とにかく問題文を解いてなれるようにしましょう。

実際に貸し倒れたとき

予想でAllowanceを計上していたのですが、実際に貸し倒れたときはどのような処理を行うのでしょうか。上記の状態から、つまりAllowanceが20,000ドル計上されている状態から、次の年に1,000ドルの貸し倒れが発生したとします。その時の仕訳は以下のようになります。

Dr Allowance for doubtful accounts 1,000
Cr Accounts Receivable 1,000

この仕訳を見て分かる通り、費用科目であるBad Debt Expenseが計上されていません。すでに前年度で収益と費用を対応させるためにBad Debt ExpenseとAllowanceを予想して計上しているので、今期に計上する必要がないのです。

Allowanceの会計上の扱い

最後にAllowanceとは一体何かということについて軽く書いておきます。AssetであるAccounts Receivableの残高をマイナスにする科目であるため、Allowanceは「逆の資産勘定」といわれています。貸借対照表上では、資産の部に△(マイナス)の科目として記載されています。

以上で、Accounts Receivableについてを終わりたいと思います。次は「受取手形」となります。