さて今回は、USCPA(米国公認会計士)と簿記検定ならどちらを勉強するべきかということについて書いていきます。僕のサイトに訪問してくれる人は基本的にUSCPAに興味がある人が多いと思うのですが、勉強を始める前に「USCPAは興味あるけど、簿記は手軽だし、どっちを勉強するか迷っています」という方も少なからずいらっしゃると思います。そのようなお方に向けて、今回の記事を書いていきます。

USCPAと簿記のどちらにするべきか

結論を書く前にあらかじめ注意書きとして、繰り返しになりますがこの記事は「会計・経理といったキャリアに興味があるけど、USCPAと簿記のどちらを勉強したらよいかわからない」という人に向けて書いています。すでにUSCPAの勉強を開始している人には当てはまりませんので、そこはよろしくお願いします。全力でUSCPAの勉強を推進してください。

さて、結論から書きますと「ぜひUSCPAを目指しましょう!」と言いたいところなのですが、それだとあまりにも無責任なため、もう少し現実的かつ効率的な解決策を用意しました。それは以下の方法になります。

「簿記2級を取得し、その時点で自身の向き不向きを判断、いけると思ったらUSCPAの勉強を開始」

USCPAと簿記のどちらにすべきか検討している人は、USCPAを目指す前に簿記2級を取得することを推奨します。これについて2つの理由があります。それは「簿記2級の範囲がUSCPAの範囲と重なる」ということと、「簿記2級の難易度が向き不向きを調べるのに適切」ということです。どういうことか、もう少し具体的に理由を交えて説明します。

簿記2級の範囲がUSCPAと重なる

まずUSCPAの前に簿記2級を目指す利点として、簿記2級で勉強する範囲がUSCPAの出題範囲にほぼ全て含まれるということがあげられます。現在商工会議所で実施される簿記2級の試験科目は以下のようになっています。

  • 商業簿記
  • 工業簿記(原価計算含む)

この2科目のうち、商業簿記がUSCPAの「FAR」という科目、そして工業簿記が「BEC」という科目に含まれています。もちろんすべてをカバーしているわけではありません(つまり簿記2級よりUSCPAの方が範囲が広い)が、商業簿記と工業簿記の最もコアな部分について勉強できるため、簿記2級を取得してからUSCPAの勉強に入ったとしてもほとんど勉強時間のロスがなく、効率的なのです。

「でも、日本とアメリカで違いはあるんじゃないですか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、安心してください。簿記は一定のルールを覚える必要があるのですが、このルールについて簿記2級レベルの問題だと日米でほとんど差はありません。もちろん言語が日本語と英語で違うという点はありますが、それは日本語で覚えてから英語でやり直すとすぐに理解できるのでそこまで損はありません。

では続いて、簿記2級の難易度が向き不向きの判断に適しているというお話をしていきます。

簿記2級の難易度が向き不向きの判断に適切

USCPAを目指すとなると、かなりのお金と時間の投資が必要になります。僕は合計100万円程度のお金と、1年間の勉強時間を投資して全科目合格することができました。今思うと20代前半の超アクティブに動ける貴重な時間を1年と、超貧乏だった時代の100万円というとんでもない投資の判断が良くできたなぁと我ながら感心するのですが、いざUSCPAを目指すとなるとかなり大きい判断を必要とするのは事実です。

そして、一番恐ろしいのは、大きな判断をしていざUSCPAの勉強を開始しても、なかなか頭に内容が入ってこず「自分には向いてないんじゃないか」と思ってしまうことです。そして、その場で「やめる」と損切りができるのであればまだ良いのですが、「せっかく大金と勉強時間を投資したのだから」と言って、自分に向いていないのに、ひたすら勉強を長期間にわたって苦しみながら続けてしまうのは最悪です。その先に待っているのは、自分に向いていない会計分野の仕事になる可能性が高く、「せっかくUSCPAに合格したのだから」と向いていない仕事を続けてしまうことにもなりかねません。

その点、簿記2級であれば市販の教科書と問題集を購入し、毎日コツコツと勉強した場合、3か月程度あればかなりの力を身に着けることができます。そして、その期間の間に「会計分野は自分に向いているかどうか」を肌感覚で感じることができます。「この専門分野を武器に鍛えていきたい」と思えば、以下の道を考慮すればよいのです。

  • もっと簿記を極めたい人:簿記1級
  • グローバルに働きたい人:USCPA

もし簿記2級を目指して「自分には向いていないかも」と思った人も、現代の社会において会計の知識はあっても一切損しないので、最低限の会計知識を備えたビジネスパーソンとして、自分が他に磨きたい専門分野を鍛えていけばよいのです。この「向いている、向いていない」を判断する絶妙な難易度の資格として、簿記2級は適切だと思います。

【余談】おすすめしない資格

ちなみにですが、絶対にやってはいけないこととして、僕は以下の考えを持っています。

  • 日本の会計士を目指す
  • BATICを勉強する

まずは、なぜ日本の会計士を目指すのがダメなのかについて説明します。一言でいうと、合格までに必要な時間が長すぎます。「公認会計士 合格時間」等で検索してもらえばわかりますが、日本の公認会計士は合格までにかかる時間が3000時間を超えるのが当たり前の世界です。毎日勉強だけに時間を費やして、かつ運が良くて1~2年でようやく合格できるレベルの難易度です。運が悪いともっと時間が必要になります。はっきり言います。あなたの時間は公認会計士の勉強なんかに費やすべきではありません。その時間があれば他に何ができるか、真剣に考えた方が人生がはるかに豊かになります。私は数人、20代の貴重な時間を5年以上も公認会計士の勉強に費やした人を知っていますが、人生における貴重な20代の時間を資格を取得するだけに費やすことは本当に理解できません。

そしてもう1点、現在は世界の動きが非常に激しくなっています。1年先のことですらほぼ予想できない状況であり、ましては10年後のことなんて完全に予測不可能です。10年後に会計士が完全に役立たずの資格になっている可能性は誰にも否定できず(もちろんUSCPAも同類です)、今の社会では膨大な労力をかけて資格取得に突き進むことは、単なるリスクが高いだけでリターンが見込みにくい行為となっています。我々にできることと言えば働きながら世の中の動きを予測し、自分が必要だと思えるスキルをその都度磨いていく柔軟性のある生き方なのです。自分の人生をかけて数年勉強に進むことではありません。その間に世界は大きく動いてしまいます。

もちろん、どうしても日本の会計士じゃなければできないことをやりたいと心から思っている人は突き進めば良いと思います。ただ、もはや日本の会計士でなければできないことなんでほとんどありません。監査法人で働きたいのであればUSCPAで十分ですし、会計関係で事務所を開きたいのであれば税理士で十分です。

次におすすめしないのがBATICです。一度USCPA勉強中に受けたことがありますが、あの試験は完全に不要だと思います。まず、簿記と比べて教材のレベルが低すぎます。会計の知識を身に着けたいのであれば、長い年月をかけて内容が磨かれ続けた簿記の教材を使用した方がはるかに効率的ですし、選択しも多く、自分に合った教材を見つけやすいです。一度書店に行ってBATICの教材を手に取ってみてください。僕が言いたいことがわかると思います。また、簿記と比べた時の勉強する意義が意味不明だということもあげられます。簿記は日本の会社の経理部として非常に役立つ資格であり、USCPAは外資やグローバルな企業で役立つ資格だと思いますが、BATICは中途半端すぎて何を目指しているのかわかりません。一度受験した経験から、BATICは資格ビジネスで利権をむさぼりたい人が作った資格なんだろうなというイメージしか持っていません。今では違うかもしれませんが、簿記と比べた時の優位性の無さは明らかなので、僕は一切おすすめしません。

以上、最後に余談が長くなってしまいましたが、USCPAと簿記のどちらを選ぶべきかということを書いてきました。少しでも興味がある人は、まず簿記2級を目指してみて、自分の適性を確認してみることをおすすめします。