今回は、USCPAの受験に関して、受験までの手続きについて書いていきたいと思います。USCPAを受験するためには非常に多くの手続きが必要となります。そのため「自分がどこまで準備できているか」を把握しておかないと「まだやり残したことあるかもしれない」と本来不要な不安を感じることになるので(経験談)、筋道としてUSCPA受験までに必要なステップを認識しておきましょう。この記事ではUSCPA受験までのイメージをつかんでいただければと思います。

USCPA受験の前に

前提として、USCPAに関する全ての手続きにおいて言えることなのですが、アメリカの試験であるため、様々なやり取りが日本での手続きとは異なり、想定より時間がかかることがあります。例えば、問い合わせた事項について先方より全く連絡がなかったり、届くはずの郵便物が予定の日程より遅れたりするという事態が普通にありえます。そのため、全ての予定について、ある程度の余裕を持たせた準備を行っておいた方が良いです。つまり「早めの準備で不安要素は早めにつぶす。」これがUSCPAの準備では鉄則です。面倒くさがらずに、出来ることはサクッと終わらせて勉強時間を確保しましょう。では、具体的に試験までの流れを見ていきます。

1.出願州を選択する

始めに、自分の現状に応じて、どの州に出願するかを決定します。アメリカは連邦政府なので、州に出願するわけです。日本人としてはなじみがないですが、日本で例えると各都道府県が強い権限を持っていて「東京都へ出願」「青森県へ出願」というイメージとなります。しかし、USCPAの試験は全米での統一試験のため、試験内容はどの州に出願しても同じです。

では、出願する州によって何が違うのかというと、それぞれの州によって「こういう要件を満たしている人なら出願して良いよ」という「受験要件」が違うのです。この辺りは柔軟性が高くて良いですね。

学位要件大学を卒業
単位要件会計やビジネス科目の単位を一定数取得
各州によって異なる受験要件

これらの受験要件と出願する州の選び方に関しては、以下の記事で詳細を記載しているので参考にしてください。簡単にまとめると、「受験のしやすさ」と「ライセンスの登録のしやすさ」を目安に出願する州を決定します。

参考記事:出願州の選び方

専門学校によっては、自分の単位取得状況を報告すれば単位がどの程度足りないのか、どの州にすればよいのかなどを相談に乗ってくれますので、活用してみてください。

2.学歴審査を行う

出願する州が決まったら、自分がこれまで取得してきた単位と、自分が出願する州の受験要件の差を知るために学歴審査を行います。まずは自分が卒業した大学に連絡を取り、英文の卒業証明書と成績証明書を取り寄せます。それらと学歴審査にかかる手数料を、国際郵便でアメリカの学歴審査機関に郵送します。学歴審査機関は米国に何種類か存在するのですが、自分の出願する州が認めている学歴審査機関を利用しましょう。アメリカにおける主な学歴審査機関は以下となります。

  1. NIES:NASBA International Evaluation Services
  2. FACS:FOREIGN ACADEMIC CREDENTIALS SERVICE
  3. ERES:Educational Records Evaluation Service

ちなみにですが僕は2のFACSを利用しました。注意点ですが、この学歴審査の結果が郵送で自分の家に届くのに割と時間がかかります。僕が利用したFACSという機関は国際郵便で必要書類を送付した後に「学歴審査依頼を受領しました」という以下のような確認メールを送付してくれました。

Dear Applicant:
Your request for an evaluation was received on MM DD, YYYY(←受領日です).  The current processing time is 4-6 weeks from this date. If additional information is required, the evaluation staff will contact you. When the evaluation is completed, the original evaluation will be sent to the state you requested and a copy will be sent to you.

上記のような「書類を受領しました。結果の郵送まで約4-6週間お待ちください」という親切なメールを送っていただいたのですが、この6週間後くらいに学歴審査の結果が届きました。2ヶ月もかからないくらいだったと記憶しています。届いた封筒が破れているというギャグ展開だったのですが、当時の写真を紛失してしまい後悔しています。そして届いた結果が以下になります。

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塗りつぶし箇所は個人情報

これは当時、受験要件が「4年生大学卒業のみ」であったメイン州に出願する際に依頼した学歴審査なので、審査は4年制大学卒業という点しか確認されていないと思いますが、現在ではどこの州であっても会計単位やビジネス単位が必要になると思いますので、それらの要件を満たしているかという点まで見られると思います。ちなみにですが、この学歴審査は「OKです」と許可が下りるわけではなく、「米国における大学の単位と同等だと思われる」といった意見表明だけが結果となります。

3.不足単位を取得

学歴審査を行うのと並行で、出願する州が必要とする「会計単位」と「ビジネス単位」まで、追加で単位を取得する必要があります。単位の取得方法として主流なのは、専門学校経由で提携している大学の単位認定試験を受けることになります。受験時とは若干異なりますが、僕がライセンス登録のために必要単位を埋めるために受けたプロアクティブ経由のグアム大学の単位認定試験はUSCPAの本番より難しいものではなく、あっさりと最高の評価で単位を取ることが出来ました。

USCPAの予備校としてメインストリームであるアビタスはカリフォルニア州立大学と提携しているようです。こちらも基本的にはUSCPAの勉強をしっかり行っていると、合格できるレベルの試験のようです。

このように、日本の大学における学歴は学歴審査機関による審査を経て出願州へ提出、そして専門学校提携の米国の大学による追加単位は成績証明書を出願州へ提出し、合わせて州の学歴要件を満たすことになります。この辺りは専門学校が実務として慣れ親しんでいると思いますので、ガンガン質問して不安要素をなくしましょう。

4.出願手続き

学歴審査機関から、上記の画像のような「受験に問題がない」旨の紙を受け取ったら、同時に自分が出願した州にも学歴審査の結果が届いていることになります。ここからいよいよ出願手続きに入ります。州によって、オンラインで出願する場合もあれば、紙面で出願する場合もあります。州によって異なりますが、日本人であれば基本的には「NASBA」と呼ばれる組織のWebサイトからオンライン出願フォームで出願することになります。

NASBAでCPA Centralアカウント作成

まずは下記のサイトでアカウントを作成する必要があります。

NASBA:CPA Central Registration

アカウント作成後、NASBAサイトのCPA Centralから出願手続きを実施します。出願を終えたら、大体2か月後くらいにメールでNTSというものが届きます。NTSとは「Notice to Schedule」というもので、これが受験票です。いよいよ試験まであと一歩というところですね。

個人情報抜き取り済みNTSの一部

このNTSには「有効期限」と「試験を受けるためのID」が記載されています。2011年受験のNTSということで、相当な年期を感じますね。今ではフォーマットとか異なるかもしれません。余談ですが、このNTSに記載されている氏名とパスポートの氏名は、完全に一致している必要があります。一致していなければ、テスト時の受付で受験を拒否されてしまいます。

※現在はNTS発行の通知が来た後、NASBAで「NASBA CPA Candidate account (NASBA SSO)」と呼ばれるものを作成し、そこからNTSを印刷する流れになっているようです。上記のステップはほぼ変わらないと思いますが、念のため最新のステップは専門学校等でご確認下さい。

その他激レア手続き

少し脱線しますが、上記の通常ステップに加えて、出願する州によってはその他のレアな手続きを実施する必要があります。僕はその両方の経験者なので、僕と同じ経験をする人に少しでも参考になるよう記録を残しておきます。

公証手続き

公証手続きは基本的に米国大使館で受けることになります。僕は受験当時に地方に住んでいたので、有休を使って東京の米国大使館まで行き、おびえながら職員の質問に答えて、最後に書類をもらった記憶があります。質問というのは「あなたは犯罪者じゃないことを誓いますか?」みたいなもので、「Yes」と手を挙げながら宣誓するようなものでした。ちなみに米国大使館に入るにはパスポートが必要です。これを別途、州の方に郵送で送る必要がありました。ただ、上述の通り日本人に人気のワシントン州やグアム州、そしてアラスカ州では公証は必要ないようなので、今後は日本人受験生でこちらの手続きはあまりやらないかもしれません。

推薦状

州によっては、推薦状を必要とする州もあります。ちなみに推薦状ですが、テンプレートのような英文を自分で記載して、それを印刷して、推薦してもらえる人にサインしてもらう方式となっています。僕は信頼できる友人3人にお願いしました。「推薦状」と聞くとなにやら教授やら上司の推薦が必要になるのではと不安になりますが、友人3人でも問題なく受験できました。

公証に加えて、推薦状3通(必要な場合のみ)を郵送で送ると、出願が完了します。

5.テストセンターの予約

NTSを受領した後、プロメトリックセンターというサイトからNTSに記載されている受験科目、受験日程、受験場所を自分で決定することができます(参考記事:試験会場及び空き具合確認方法)。

参考:プロメトリックセンター

今では日本受験の会場として、東京と大阪で受験することが可能です。日本受験を選択すると追加の費用が必要ですが、僕は心から日本受験をおすすめします。テストセンター予約の際に、NTSに記載されているIDが必要となります。NTSを手に入れるまでは非常に長い道のりになりますが、一旦NTSを手に入れれば、有効期限内であれば自分の好きなときに受験を行うことが可能になります。勉強の進捗状況を考慮して、最も都合が良い日にテストの予約を入れましょう。予約を入れると、テストセンターより予約確定のメールが届きます。いよいよですね。

6.本試験へ

テストの予約を入れれば、あとはその日までしっかりと勉強して受験するだけになります。試験当日の持ち物は基本的にパスポートとNTS、そしてテストセンターからのメールを印刷したものとクレジットカードになります。クレジットカードとパスポートの署名は一致している必要があるので気を付けましょう。USCPAは各科目、数時間にもおよぶ長丁場の試験になりますが、これまでの勉強を信じて頑張ってください。各試験会場の情報は「USCPA:試験会場情報」でご確認ください。

以上で受験までのステップを終わりたいと思います。出来る限り自分の経験に基づいた情報を掲載するようにはしておりますが、最新の情報は必ず専門学校に確認するようにしてください。