プロジェクトにはどれくらい参加すべきか
監査法人、コンサルといった、プロジェクト単位で業務を行う企業に所属している人にとって、どれくらいのプロジェクトに同時に参加しておくのかということについて書いていきたいと思います。今回は私が所属している監査法人のアドバイザリー部門をベースに話を進めていきます。
監査法人では業務は基本的にプロジェクトにアサインされてから始まるものであり、人によっては50%ずつ2つのプロジェクトのアサインが同時期に入ったり、100%のアサインで1つのプロジェクトに関与したりします。前者の50%アサインで2つのプロジェクトにアサインされた場合、仮に定められた勤務時間が8時間だとすると、1日4時間ずつ違うプロジェクトの業務を実施するというイメージです。
実際は月曜日は100%A社、火曜日にB社100%みたいなことや、人によっては定時内の時間は全てA社のプロジェクトの業務にあてて、定時外でB社の業務をやる、みたいなかわいそうな人もいます。そこまではいかなくても、うまく切り替えするのが難しくて5時間5時間の10時間勤務で2時間残業とかになったります。
では、本題に入るとして、実際にどの程度のプロジェクトにアサインされているのがおすすめなのでしょうか。おすすめとしてはアソシエイトのような下っ端時代には1つのプロジェクトに100%、マネージャーになると2つ(%の割合は問わない)、それ以上の職階はまだ私が未到達なので判断不可能だが見ている限り「少なければ少ないほど良い」となります。
もちろんクライアント次第ということもあるので、アサインについては自分の力でどうしようもない側面はありますが、極力アソシエイト時代は1つ、マネージャー以上になっても極力2つ程度に抑えておいた方がよいと思います。
アソシエイトのアサイン
なぜアソシエイト時代は1つが良いのかというと、ここは単純に業務になれるため、また自分の専門を深く磨くためとなります。アソシエイトということは監査法人に入ってまだ時間が短いということで、これから色んなことに慣れていく必要がある段階です。そんなときに色んなプロジェクトに手を出すと、そのプロジェクトになれるだけで結構な労力を使うのに、それが複数となるとなかなか自分の力を発揮することが出来ません。
それが1つのプロジェクトに100%の力を出し切ることが出来るのであれば、そのプロジェクトにのみ注力することが出来るので、関連して勉強が必要となる分野も多くないし、一気に専門性をあげることが出来ます。力を入れられるということは仕事でミスをやらかすことも少なくなるので、評価も得やすい環境であると言えます。
また、アソシエイトの業務は基本的に長時間調べ物をして内容をまとめたり、とにかくひたすら手を動かすものが多い傾向があります。そりゃ入りたての下っ端にクライアントとのコミュニケーションを任せたり、今後のプロジェクトの進め方について任せるわけにもいかず、必然的に任せることが出来る業務は、決まった方針に基づいて必要となる情報調査・とりまとめ、または資料作成となります。これらの業務は時間がかかるものが多いので、これを100%より低い関与率、例えば50%でやろうとすると、一気に時間が足りなくなり、残業地獄に陥ることになります。
さらに悲惨なこととして、基本的にマネージャーはアソシエイトが50%だろうが100%だろうがあまり気にせずに仕事を振ってくることになるので、関与率が低いアソシエイトの場合はいずれ時間的にどう考えても無理という状況になることがあります。そんなときに関与率100%のアソシエイトが別にいた場合、今度からそっちに頼むか、ということになり、時間が投入できないだけで評価されないという空しいパターンになる可能性もあります。
マネージャーのアサイン
アソシエイトとは打って変わって、マネージャーの場合はできれば2つプロジェクトを掛け持ちしておくことをおすすめします。理由は様々なのですが、いかに主な理由をあげていきます。
一個がクソだったときに「もう一つを頑張ろ」と思える
プロジェクトあるあるですが、社内メンバー、もしくはクライアントにクソみたいな人がいたり、なぜか何をやっても裏目にでたり、とにかく何かうまくいかないみたいなクソ展開になることがあります。そんなとき、他にプロジェクトを抱えていると「とりあえずこっちあるからこっち頑張ろう」と切り替えることが出来ます。人間ずっとクソなことを考えるのは精神的に良くないので、逃げ場として別プロジェクトという場を持っているのは精神衛生上非常に重要です。
頭の体操になる&応用が利く
例えば同じようなプロジェクトに2社参加している場合、片方の困りごとをもう片方のプロジェクトの事例を当てはめてみたり、それぞれのクライアントが実践している業務が応用ができないか検討してみたり、とにかく何かしら比較できる材料が手元にあるのと全くないのでは思考の自由度が大きく違ってきます。もちろんクライアントの資料をそのまま使用すると完全にアウトなので、その資料の本質の部分を抽出し、課題を抱えているクライアントに応用をしていくことが求められます。
飽きから少し解放される
正直マネージャーになるぐらいまで監査法人に在籍していると、そこまで完全に新しい仕事に出会うことはあまりありません。これまでの経験を踏まえて新規提案に入れられたり、これまでの経験を土台としてマネージャー業務を割り振られることがほとんどなので、何をしても「どこかでやったことがある」業務が多くなってくるのです。それを1つのプロジェクトにいてずっと同じクライアントと対峙しているとなると、さすがに飽きがやってくると思います。それを防ぐためにも、2つのプロジェクトに参加し、飽きてきたらもう片方のクライアントの仕事をする、というメリハリを利かせることが出来ます。
他社事例(経験)が増える
これは何度かこのブログでも書いてきたのですが、監査法人で働くことの大きなメリットとして、企業からするとプロジェクトにするような経験を他社事例としてたくさん積むことができることがあげられます。企業が思い切って踏み出すことを、日常のプロジェクトとして何度も経験できるので、市場から見たらかなり貴重な経験を積み続けていることになります。2つのプロジェクトに参加している場合、その経験値が貯まるスピードが単純に2倍にすることが出来ます。
3つ以上に参加した方がよいのではないか
2つのプロジェクトに参加するメリットを色々と書いてきましたが、「では3つ以上に参加した方がよいのではないか」と考える人も出てくると思います。過去5つのプロジェクトに参加したことがある経験から、複数のプロジェクトに参加するデメリットについても身をもって体験してきたので、それを書いていきたいと思います。これはもちろん2つのプロジェクトの場合でも当てはまりますが、プロジェクト数が増えるほどデメリットも大きくなるということをご理解いただければと思います。
休みの調整
複数のプロジェクトに参加している場合、有休を取得するのが非常に困難になります。内部の人間、外部の人間と関係者が多くなるので、この日に次々と予定がカレンダーに埋まってしまい、1日休みにするというのが至難の業になります。私はこれで何度か有休を消化しきれずに消滅させています。お気を付けください。
変なやつに当たるリスクが増える
複数のプロジェクトに参加するということは、コミュニケーションをとる人間の数も必然的に増えるということになります。ということは、頭のおかしい人間にぶち当たる可能性もその分高くなるということになります。厄介なのはその頭のおかしいやつが100%でも対応しきれないような依頼を当然のように連発してくる場合で、そのときは他のプロジェクトを抑えながら対応する、もしくは大幅な超過労働で対応することになります。このときに参加しているプロジェクト数が重要となってきます。仮に2つのプロジェクトに50%ずつで入っている場合と、5つのプロジェクトに20%ずつで入っている場合を考えてみます。
- 頭がおかしいやつの対応100%+他のPJ50% = 150%
- 頭がおかしいやつの対応100%+他の4つのPJ20%*4 = 180%
2つのプロジェクトの場合は他のPJの時間を少し抑えて対応すれば何とかなりそうですね。50%ずつなので調整の余裕があり、仮に超過労働にして一気に解決しようとしてもそこまで無理がある期間が長くなることはなさそうです。一方、5つのプロジェクトをやっている場合はそれぞれに避ける時間が短い中でさらに時間を抑えるということをしなければならず、かなり無理がある状態になっていることが分かります。さらに他の4つのプロジェクトが少しでも炎上するともうどうしようもなく、自分の時間が全く取れずに一生働き続ける地獄に入ることになります。余裕が一切なく、精神もすり減り続けることになります。
このように、3つ以上のプロジェクトに入るともちろんメリットも享受することはできますが、それ以上にデメリットが大きくなりすぎることがわかったので、個人的には2つのプロジェクトに参加しておくことをおすすめします。特に1つは大規模な毎年やることが比較的決まっているもの、もう一つはこれまでの試みとは違う新しいものや、自分にとっての挑戦になるようなプロジェクトとうまく組み合わせられると最高だと思います。