難関資格を目指す前に知っておいてほしいこと

世の中には、人生をかけて勉強して取得できる資格がある。それを目指す前に。

難関資格を目指す人へ

今の日本には、難関資格と呼ばれるものがたくさん存在します。例えば、以下のようなものがあげられると思います。

  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 弁理士
  • 税理士

もちろん、理系の資格も合わせるとその数は膨大なものになると思います。これらの資格に共通することは、難関であること、つまり合格率が非常に低く、何年も勉強してようやく取得できるものであったり、合格率が10%を切っていたりするものであったりします。そのため、その有資格者には独占業務があることもあり、一般的に安定かつ高給取りなイメージが定着しています。

これらの安定かつ高給取りなイメージがさらなる受験者を呼び寄せ、合格率が低下することがなく、さらに難関資格としての地位を築いていくことになります。そして、その資格を目指す人は勉強に専念する必要が発生し、その勉強だけに1日の大半を費やす期間を1年や2年、場合によってはそれ以上の期間を費やし、ようやく合格という流れが一般的になっています。そして、それらの資格を目指す人は、以下のようなモチベーションを持っていることが多いです。

  • 弁護士になって、困っている人を助けたい
  • 公認会計士になって、資本主義の秩序を守りたい
  • 弁理士になって、知財戦略を考えたい
  • 税理士になって、中小企業を元気にしたい

当然ながら、安定と高級のみを目的に勉強している人もいるかもしれませんが、僕がこれまで出会ってきた難関資格勉強者は、このような素晴らしい考えを持っている人が多かったです。僕もUSCPAの勉強を行っているときは、自分の力を日本企業がグローバル化することに役立てたいという気持ちが強かったです(もちろん今も)。

もちろんこのような考えを持ちながら勉強を続けることは素晴らしいことです。一方で、ひとつだけアドバイスをしたいことがあります。それは、難関と言われる資格を目指す人ほど、試験勉強と並行して「合格後に働く可能性が高い、もしくは働きたい組織」での業務経験を積んだ方がメリットが大きいということです。

この業務経験とは、何も正社員として働くというだけではありません。例えば税理士を目指している人であれば税理士事務所でアルバイトとして働くこともありですし、契約社員として働く、さらにはインターンという形で関わることも可能です。とにかく、どのような形であれ、少しは自分が将来関わる可能性が高いところに身を置いてみます。すると、以下のメリットを享受することが出来ます。

1.自分に合うかの確認が可能

これから長時間かけて勉強するであろう資格が、自分の興味がない仕事を引き寄せるのであれば最悪です。その資格を取得後に関わる業界と自分が合っているのかを調べるために、先にどのようなものなのかを資格取得前に肌で感じることが出来るのです。

例えば「弱者を助けたい」と思って弁護士になろうと思っていたのですが、いざ弁護士事務所でアルバイトをしてみると、逆にお金を持つ人からの依頼で弱者を叩きのめす仕事をやる必要があるのかもしれませんし、弱者と思っていた人が実は性格が悪い人々の集まりの可能性もあります(あくまで例です)。

しかしこういったことは少なく、実は自分のやりたいことを存分にできる環境なのかもしれません。そうかそうでないかは、実際に働いてみないとわからないのです。この自分がイメージする有資格者の仕事と、実際の有資格者の仕事のギャップを勉強開始前に知ることが出来るというメリットがあるので、このギャップを知るためにもまずは勉強を本格的に開始する前にその分野で働いてみることをおすすめします。

2.先人の声を直接聞くことが出来る

次に、その業界ですでに資格を持って働いている人の声を直接聞くことが可能というメリットがあります。例えば公認会計士になりたい人は、小さな会計事務所や監査法人にアルバイトとしてでも関われば、そこにはすでに資格試験を突破した人たちがはtらいているのです。

そのすでに働いている人に、どのように勉強したのか、実務にどのように役立っているのか、資格を取ったあとは何を勉強しているのか、今の旬の話題は何か、など、仲良くなればどんどん質問を重ねることができます。場合によっては、そのときに人脈を作っていれば、本格的に受験勉強を行い、合格したあとに何らかの手助けをお願いできるかもしれません。

3.実務と知識をつなげることが出来る

勉強によって得る知識と、実務がどのようにリンクしているのかを身をもって知ることが出来ます。実際のパターンは逆で、勉強したことはほとんど実務と関係がないのかもしれません。

僕の場合はUSCPAを目指しながら経理系の部署で働いていましたが、実際の実務で切る仕訳や連結決算業務などは、勉強したこととどのように繋がっているのかを知ることが出来て、より深い理解が出来ました。僕の友人に税理士を勉強している人もいるのですが、その人も税理士事務所で働きながら勉強していると、勉強している箇所が仕事で直接かかわるようになると非常に楽しく理解することが出来ると言っていました。

4.合格後のイメージが具体的になる

上記にあげた目標は、それ自体はすばらしいものですが、「困っている人を助けたい」や「元気にしたい」など、なかなか抽象的な目標になっています。このままでは、長期間にわたる勉強維持のためのモチベーションとしては難しいかもしれません。特に、まだ社会で働いたことが無い人にとっては、社会で働くとはどのようなものかを知らずに勉強を続けることになり、モチベーションの維持が非常に困難になります。

実際に働くであろう場所に少しでも関わることによって、その資格を持つ人がどのような場面でどのような人を助けるのかを目にすることができます。リアルな現場を知る身として、当初のあいまいな目標から「○○の場面で○○といった問題で困っていたあの人を助けたい」というより具体的な目標に替えることが出来ます。

5.選択肢を得ることが出来る

勉強と並行して実務に携わることで、良いことにも悪いことにもぶつかると思います。実は自分が目指そうとしている業界は自分に合っていないと感じるかもしれません。実は、僕が勉強と実務を並行することによってもっとも重要だと感じるメリットが、この「もしかしたら合っていないかもしれない」と感じることなのです。

これを感じることによってはじめて、他の選択肢を考慮することが出来ます。勉強に専念している人には、実務に関わった時に自分がどのように感じるかを知ることが出来ません。どれだけ働いている姿を想像しようとも、実際に働いてみる経験の深さには勝てないのです。仮に1年程度、勉強と実務を並行してみた結果、やはりその道は自分には合っていないと感じるのであれば、また別の道を探せば良いのです。ここは重要なので、もう少し詳しく書きます。

他の選択肢を持てるということ

日本人は非常にまじめなので、「せっかく1年も勉強と実務を積んだのに、合わないからってすぐにやめてしまうのはもったいない」と思ってしまう傾向にあります。もしやめると周囲に相談すると、「もったいない」と言われるかもしれません。ですが、別にやめてもよいのです。

逆に、自分に合わないことを残りの人生で一生やることの方が人生がもったいないです。たった1年で自分に合わないと感じ取ることが出来たのは人生単位で見ると非常に幸運なことであり、本格的に資格の勉強に入る前に、さっさと見切りをつけて自分の他の可能性を求めて、他に興味があることにどんどん挑戦すれば良いのです。

勉強に専念していた場合

では、勉強に専念していた場合はどうでしょうか。自分にその分野が合っているのかを確認することが出来ません。そして、1~2年、もしくはそれ以上の勉強時間のあとに資格に合格します。そして初めて実務の現場に出てから1年が経過したあとに、自分がその分野に向いていないと気が付くとします。

そのときにその業界をやめるということは「勉強期間最低1年、資格、実務経験1年」というステータスを捨てる必要があるのです。難関資格であればあるほど、このステータスを捨てることが困難になります。そして、迷いながらも仕事を続けるうちに、さらいに時間がたったおかげでやめにくくなるという循環に陥ります。

難関資格であるということ

僕は、この状態は難関資格であるがゆえにさらに発生しやすいと考えています。難関資格はそのステータスや社会的イメージが非常に大きいため、どのような業務を行うのかをあまり知らない状態、もしくは憧れをもった状態で勉強を開始する人が多いと感じています。

そして、実際に行う業務と自分が考えていた世界との落差が激しく、実務を開始してからそのギャップに苦しむことになるのです。そして、既に資格を持っているために、自分のステータスは弁護士なり税理士なり、なにらかのものになっているのです。その状態からやめるというと周囲から猛烈な反対をくらうことになるでしょう。そのときにやめることができなければ、合わないと感じている業務をずっと続けることになります。

まとめ

これが、難関資格を目指す前に知っておいてほしいことでした。もちろん、勉強と実務を並行して、自分には合っていると感じた場合は、一旦実務を止めて、全力で勉強に専念しても構わないのです。むしろ、その方が実務と知識のつながりを浅くとも理解しているので、勉強の理解度も早くなると思います。

このことに対して「アルバイトなどでは仕事の本質はわからない」や「勉強時間が確保できない」といった反論があるのは承知していますが、僕には上記のようなメリットはデメリットを補って余りあると考えています。僕もUSCPAの勉強を「本格的に」開始したのは経理系の部署に配属が確定してからでした。この情報が、少しでも今後の難関資格を考えている人の役に立てば幸いです。

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