人は変われるのか1

変わりたい。自分はこんなものじゃない。本気を出せばもっとうまくいく。自分はまだ本気を出していないだけ。自分は変われる、きっと変わることができる。誰しもが思うことかもしれないが、本当に人は変われるのか。今回はそんなお話。

はじめに

僕は努力が嫌いな子供だった。特に勉強に関しては大嫌いだった。学校のクラスにいるような優等生は先生に褒めてもらうために媚びて勉強しているようにしか見えなかったし、勉強したところで何も変わらないと思っていた。つまり、生きる上で勉強はこの上なく無意味でつまらないものだと、何も知らないのに決めつけていた。

勉強なんてするより、もっともっと遊びたかった。昆虫採集や泥団子を作ったり、ゲームをしたりする方が何倍も楽しかった。特にゲームに触れてからはあまりの面白さに衝撃を受け、一日中ゲームをするようになった。親はさすがに勉強するように僕に言ったが、特に聞き入れることもなくゲームにはまりこんだ。

小学校の高学年の時に出会った先生が僕の勉強をしない生活に拍車をかけた。それまでは宿題を強制的にやらされるシステムだったので、ある程度の成績は修めることができていたが、その先生は宿題を強要しなかった。おかげで僕は宿題すらやるのを怠り、結果、成績は無残なほど急降下していった。

中学に入り、一気に勉強する科目が増加した。英語や数学など、急に難易度が高い分野が登場したのだ。僕はどのように勉強したら良いかもわからず、ただわからないから勉強したくなく、とにかくゲームに没頭していった。

僕はまだ本気を出していないだけ。やればできる。

常にこう思うようになった。自分は本当はできるんだけど、本気を出していなからこういう状態なんだ。本気を出せば違うんだ。そう思うことによって、自分が出来ない状態をある意味肯定しながら生きてきた。

そのままの状態で高校受験を行い、当然のことながら平均値より少し低いレベルの高校に入学した。そこは少し普通の高校とは違って、卒業後に働く人の割合が非常に高い高校だった。あまりに勉強が嫌いだったため、大学にいくことは最初から選択肢になかった。

さっさと勉強をやめて、1秒でも早く働きたかった。特に高校を辞めて働きだす勇気もなく、惰性で通っていた。在校中も全然勉強せず、必要となる資格だけは何とか取得して(高校の授業に出席すると何となく受かるもの)、あとはバイトに明け暮れていた。正直言って、高校の時の記憶はバイトのものが大半を占めている。

そしていよいよ高校を卒業したとき、待ちに待った勉強から解放されたとき、一番初めの会社で働き始めたとき、青い僕は当たり前の現実に直面することになる。僕が入社した会社は、僕が入社した年に初めて高校生を実験として新卒で雇い始めたような会社だった。そのため、大学生の新入社員と共に研修を受けることになった。

社会人スタート

この研修で僕は、高校生と大学生のあまりに大きい「差」に愕然とすることになる。今思えば全く当然のことなのだが、ディベートや発表、グループワークの役割分担など、社会人として生きていく上での基礎的な能力に埋めがたい差が存在することを強烈に感じることになった。一生懸命働いていればそのうち昇進していくと勝手に甘く思い込んでいた自分は、あっさりと自分の勘違いという現実を突きつけられ、打ちひしがれた。時間を重ねるにつれて、ふとした思いが僕の頭によぎるようになる。

「大学に行けば、この人たちのようになれるのか」

人生で初めて、大学を意識した瞬間だった。そして、研修の途中にあった人事研修で、最も大きい衝撃を受けることになる。

その研修では何をやったのかはもう全く思い出せないのだが、ハッキリと思いだせることがある。それは、昇給及び昇進に、大学生と高校生の間で大きく差が設けられていたことだ。僕はその紙を何度も見直し、自分がどのような立場に置かれているのかを理解し始めた。というか、そこまで何も知らないような世間知らずだったのだ。

そう、学歴社会は終わったと言いながら、大学生の方が給料の上がる幅は大きいし、昇進の最終的なゴールも高い。こんなの当然のことだが、当時の僕は本気で高卒でも大学生と同じような職につき、同じようなことをすると思っていた。

研修が終わった後、現場に飛ばされた。大学生は本社に残ったまま。ホワイトカラーとブルーカラーの違い。今だから包み隠さずに言うが、僕が配属された先は、全く持って悪い場所ではなかった。ゆっくりしたい人にとっては、最高の環境だと言っても良かったかもしれない。

現場の構成は基本的に、年金をもらいながらもまだ働いているような老人が数名。そしてそこから50代、40代、30代、20代の社員が1人か2人ずついて、一番下に10代の僕が入ったというものだった。詳しく業種は書けないが、非常に楽な職場だった。のんびりとしていれば毎日が終わり、終われば家に帰りネットやゲームをして寝る。それの繰り返し。

違う。

頭にこんな考えが浮かぶ。違う。こんなのは僕の人生じゃない。僕はまだ本気を出していないからー

それも違う。

そう、正直、心のどこかではもう気づいていた。今までの人生の積み重ねた結果が今だということ。何もやってこなかったから、結果として今こういう状況にいること。

では、この状況を続ければどうなるのだろうか。答えは明白だった。この現場にはそれぞれ20代、30代、40代、50代、そして定年後の人たちが並んでいたから。この道を歩むのか、と自分に問うたとき、否という結果になった。一度の人生であるならば、もっと色んな事に挑戦したい。今まで何もやってこなかった結果がこの状態なのであれば、今からでも人生を変えてみたい。真剣にそう考えた。

そこで、僕は、自分の人生を変えてみることにした。

その2に続く

※ちなみに僕は一緒に働いた人たちは全員尊敬しているし、彼らがダメだというつもりはない。人生は人それぞれであるべきだし僕は違う人生を生きてみたいと思っただけだ。実際、振り返るとこの現場の20代の社員といった焼肉や遊びなどの思い出が、社会人生活でトップレベルに楽しかったと思う。

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