内部統制の仕組みと実務がわかる本

今回は、1冊の本の紹介をしたいと思います。結論から言うと、内部統制や内部監査、特にJ-SOXに関わる領域の仕事をしている人、もしくはこれからすることになった人には1冊目の入門書としておすすめです。

今から始める・見直す 内部統制の仕組みと実務がわかる本〈第2版〉

浅野雅文という方が著者であり、経歴を見る限り米国においてSOXが導入されたころから(つまり最初期)国内上場企業や外資系企業に内部統制の導入を支援する経験を持つ人のようです。

内容としては、よくある内部統制関連の本にありがちな「内部統制とは何か」「内部統制の評価」などの教科書に載っていそうなことをひたすらに書き続けているものではなく、「なぜ内部統制の対応が行き詰ってしまうのか」「効率的に内部統制に対応するためにはどうすれば良いか」ということから始まっています。もちろん他の本にも書かれているような内部統制とは何か、いわゆる内部統制評価基準に沿った説明も含まれていますし、J-SOXである内部統制報告制度に関する内部統制評価の対応方法(文書化から評価、不備の改善まで)もしっかりと書かれています。

もちろんこれ1冊で完ぺきに内部統制に対応できるのかと言われると、内部統制というものは実務であり各社各様に異なる部分が多いため、当然その企業に合わせた応用が必要になるのですが、基礎をざっくりと掴むにはかなりおすすめできる1冊になります。いきなり変な専門書に飛び込むよりは最初の一歩としてこの本を読んだ方が確実に理解のスピードは速まると思います。

著者は元監査法人に勤務していたようですが、内部統制の対応を監査法人に任せると、過剰に無駄な対応をすることになる可能性が高いから要注意という指摘をしています。特になぜ内部統制対応が行き詰るのかという章で監査法人に頼ることの危険性が記載されています。僕も監査法人へ勤務するものとして納得できる部分はあるのですが、これも結局はクライアント次第だということは付け加えておきたいですね。

僕も現在進行形で内部統制の支援を監査法人で実施していますが、求める粒度感はクライアントにゆだねています。僕はアドバイザリーという立場なので、クライアントが「内部統制は監査人がOKというギリギリの水準でOK」と言われればその水準を目指しますし「しっかりやりたい」と言われれば頭を捻ってより効果的・効率的な内部統制はどのようなものかを考えます。これに関しては、監査法人の中でも人によって異なるのかもしれませんね。少なくとも僕が一緒に働いている人たちの中で何でもかんでも統制として盛り込んでやろううと考えている人は少数派だと思います。

とはいえ、冒頭にも記載しましたが、こちらの本は入門書、というより内部統制に関する仕事をやる人の1冊目としてかなり良い内容だと思いますので、おすすめです。

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