リーマンショック振り返り1

これまでなんとなく知っていたのですが、詳しく何かと問われると答えられないものがリーマンショックでした。これまでに若干勉強する機会があったので、ここにまとめておきます。ただ、素人がまとめたものなので、間違い等あるかもしれませんが、そのあたりはご了承ください。

<サブプライム問題について>

リーマンショックについて知っている人は、ほとんどが「サブプライムローン」という単語も聞いたことがあると思います。今回はまずこのサブプライムローンとは何かということから書いていきます。サブプライムローンには、「サブ」がついていることからわかるように、何かのサブというものになります。このサブではないものが「プライムローン」ということになります。サブプライムローンを理解する際には、このプライムローンとは何かを考えるとわかりやすいと思います。

「プライムローン」とは、優良なステータスの人々への貸し出し(ローン)というものになります。優良とは、何年も同じ会社に勤め続けていたり、公務員であったりといった、貸し出したお金を回収するのに問題が無さそうな人々のことを指します。このような問題を起こしそうにない人々へのローンを「プライムローン」といいます。

逆に、そうではないローン、つまり若干回収にありそうな人々への貸し出し(ローン)が、「サブプライムローン」というものになります。例えば、職業をコロコロすぐに変えていたり、フリーターであったり、収入が極端に低かったりする人々へのローンのことになります。この、若干問題がある人へも貸し出しを行う手段として「サブプライムローン」というものがありました。

このサブプライムローンをノンバンク、つまり銀行ではない貸金業が始めたのが全ての始まりになります。このリーマンショックにつながるサブプライムローンも、開始当初は非常に良いものだとされていました。このローンのおかげで低所得者も持ち家を持つことができたためです。低所得者でも家が持てるということはアメリカでの持ち家比率の上昇につながり、このローンが賞賛される結果になりました。

ただ、このサブプライムローンの貸し出しの基準が甘くなり始めました。さらに、貸し出し相手は低所得者だというのに、貸し出し当初の数年間は金利が低い固定金利(金利が変わらないもの)でありながら、ある一定の期間が過ぎると変動金利に切り替わるタイプのローンや、貸し出して当初数年間は借りた側が金利を決定できるようなローン、貸し出し後数年間は元本の返済が不要なローンなど、いずれも借りた後数年すれば返済額が大きくなるようなローンが次々と貸し出されました。

低所得者にそんなローンを貸し出しても、数年後に払えなくなるのは目に見えているじゃないかと普通は思うのですが、このタイプのローンはどんどんと貸し出されました。理由としては、持ち家の価値が上昇すると見込まれていたからです。数年後に返済額が上がったとしても、家も値上がりしているので、家を売却して全てのローンを返済すれば問題ないと思われていました。

しかし、家の価格が上昇し続けるという話は歴史が証明しているようにありえないものであり、2006年頃から住宅価格の上昇がストップし始めました。これで住宅価格の上昇を見込んでサブプライムローンを組んでいた人たちの目論見は見事に外れることになりました。これでまったく返済のめどが立たなくなってしまいました。このことにより、住宅価格が上昇しないため、売却しても損するし、金利の支払い金額は大きくなるしということで、借金(サブプライムローン)を踏み倒す人たちが数多く現れました。さすがにどうしようもないとは思いますが、払えないものは払えないということでしょうか。

結果として、サブプライムローンに関連する延滞率(返していない人の割合)が上昇し始めました。それに伴って、アメリカのノンバンク(銀行以外の貸金業たち)がつぶれていきました。これが、「サブプライム問題」と言われる問題を簡単に説明したものになります。このサブプライム問題でことが収まればリーマンショックになることはなかったのですが、これがリーマンショックにつながることが行われていました。それが「証券化」というものです。

<証券化について>

証券化とは、無理を承知で簡単に今回の事例をもとに説明すると、ノンバンクが低所得者にサブプライムローンを貸し出すと、その低所得者から金利の支払いを受けることができます。その「金利を受けることができる」という権利を一つの金融商品とみなすことです。例えば「低所得者100人から15年で合計10億円のローンの支払いを受ける権利」が8億円で売られるみたいなものです。さらにこの権利を他の金融商品を混ぜたりしてぐちゃぐちゃにする証券化が頻繁に行われました。

この証券化という技法によって、アメリカのローカルな問題であったサブプライム問題が、世界を不景気に陥れるリーマンショックへと橋渡しする役割を担うことになります。次に問題が発生するのは、フランスの巨大銀行であるBNPパリバであり、これはパリバ・ショックと呼ばれています。こちらはあまりメジャーになっていないのですが、こちらも重要なため触れていきたいと思います。

<パリバ・ショックについて>

サブプライム問題やリーマンショックは聞いたことがある人が大半だと思いますが、このパリバ・ショックはあまり知られていないと思います。僕もこの問題を調べるまで聞いたことがなかったので、日本人にはあまり知られていないのかもしれません。では、そのパリバ・ショックとは何なのか。簡単に記載すると、フランスの大手金融機関であるBNPパリバが、自社の持つファンドが取り扱っていたサブプライムローンが組み込まれている証券化商品の一部に対して、解約及び返金を一旦停止したことになります。このことにより、証券化商品に対する不安が爆発的に増加することになりました。以下で、そこまでに至る過程を見ていきたいと思います。

上記のサブプライム問題を起点として、アメリカのノンバンクが破たんするなど、市場に少しずつ不安が積もり始めていました。そんな中、同じくアメリカの投資銀行であるベア・スターンズが持つファンドが、巨額な損失を計上する事態が発生します。その巨額の損失を計上したファンドに対して担保を取って資金提供していたメリルリンチ(こちらも当時アメリカの投資銀行)が、その担保を処分するという一連の流れが報道され、市場にさらに不安が積もることになります。この時点で、ベア・スターンズが持つファンドの損失だけでなく、それ以外のヘッジファンドにおいても破たんや損失が次々と発生しました。それらのボロボロになったファンドが投資していた主な金融商品が以下になります。

・サブプライムRMBS:

サブプライムローンを証券化したものであり、日本語では住宅ローン担保証券と呼ばれます。RMBSとはResidential Mortgage Backed Securityのことです。簡単に説明すると、サブプライムローンを利用して住宅を購入した人が支払う金利や元本を受け取る権利をひとまとめにした後に、その権利を証券化して投資家に販売したものです。

・CDO:

こちらはCollateralized Debt Obligationのことで、日本語では債務担保証券と呼ばれます。これは上記の証券化商品の金額を受け取る権利を「もう一度」ひとまとめにして、そのまとめられたものから利息等を受け取る権利を証券化して投資家に販売したものになります。「証券化商品を証券化したもの」といえばよいかもしれません。ちなみにこちらの商品を発明したのは先ほどのベア・スターンズという投資銀行といわれています。

これらの商品に共通することは、サブプライムローンに関係していることになります。このサブプライムローンに関連する商品に投資していたファンドが次々と損失を計上し、破たんしていく事態になったのです。市場の反応としては「サブプライムローン関連商品を購入しているファンドは大丈夫なのか」という不安がさらに積もることになります。さらに、格付け機関がサブプライムローン証券化商品の格下げや、格付けを見直し始めました。

格付け機関とは、有名なところで言うとスタンダード&プアーズやムーディーズといった企業があげられます。様々なものに対して「AAA」や「BB-」等の評価、つまり格付けを行い、それらが安全か安全でないかを公表しているのです。それらの格付け機関が、サブプライムローン関連商品について「危険」といわれるような格付けを行い始めました。これにより、すでに下がり始めていたサブプライムローン関連商品の価格がさらに下がることになりました。さらに、この流れはサブプライムロー関連商品だけでなく、「プライムローン」、つまり優良な消費者への貸し出しをもとに行っているローンの関連商品にまで及ぶようになりました。そして、アメリカ国内だけの問題と思われていたサブプライム問題が、とうとう世界中で火種を抱えていることが判明する事態が発生します。

<ドイツにおける銀行経営危機>

IKBドイツ産業銀行。ドイツのデュッセルドルフに本社を構える中小企業に対する融資を行う専門の銀行が、サブプライム関連商品に対する投資によって巨額の損失を計上しました。この銀行は最終的にはアメリカの投資会社であるローンスターに買収されますが、この銀行が損失を計上することにより、以下の点が明らかになりました。

  • サブプライム問題はもはやアメリカのみの問題ではないこと

これまでは、サブプライム問題はアメリカだけの話と思われていました。ところが、ドイツにおいて問題が発生することにより、アメリカだけでなく世界中に問題があることが判明しました。

  • 問題の影響は「銀行」にまで及んでいること

一般的に「銀行」とは安全な投資を行う企業であり、「安全・安心」であると思われています。理由としては危険なことができないように規制で行動を制限されているからです。事実、このIKBドイツ産業銀行までは倒産するのはノンバンクやヘッジファンドなど、規制がきつく課せられていない企業だけでした。

このIKBドイツ産業銀行が損失を計上することにより、市場のなかで更なる不安が積もることになります。注意点としては、この銀行が投資していたサブプライム関連商品の格付けは最も安全を示す「AAA」でした。最高級の格付けです。格付け機関の存在意義を疑うような話ですが。この不安が世界中に蔓延している状態で、パリバ・ショックが発生します。

<パリバ・ショックの発生>

2007年8月9日のことです。フランスの大手銀行であるBNPパリバが、傘下ファンドのサブプライムローン証券化商品が組み込まれている投資信託について、以下を行わないことを発表しました。

  • 価格の算出
  • 新規募集
  • 解約
  • 返金

つまり、「この商品に関して金額を計算することもできないので、新しく募集もしませんし、解約も返金も金額がわからないので行いません」ということです。BNPパリバは、世界中に展開している巨大金融機関です。サブプライム関連商品はその一流金融機関が手におえないような金融商品なのかという印象を市場に与えることになりました。これまで蓄積した不安が爆発することになります。

このパリバ・ショックを原因として、サブプライムローン証券化商品に深くかかわっている投資銀行かが次々に問題が噴き出すことになります。長くなったので一旦ここで切りますが、次回はなぜ金融機関が破たんするか、また金融危機が発生するのかについて書いていきたいと思います。

次の記事:リーマンショック振り返り2:金融機関の破たん

リーマンショック振り返り1” に対して2件のコメントがあります。

  1. K より:

    USCPAについて調べてる際にこちらのサイトを拝見し、参考にさせていただいてる者です。出願州について質問がありコメントしました。

    アラスカ州で出願し、合格後ワシントン州にトランスファーしてライセンス取得を考えていたのですが、監査法人へのキャリアを志望しているわけではなくスキルアップと履歴書上でのシグナリングを狙っての受験である為、ライセンス取得後のCPEなどがどれくらい負担になるのか気になっています。(時間と資金の費用が大きいのであれば、グアム州での出願に変更して、inactiveライセンス取得を狙うことを考えています。CPAを資格として書きたいためです)
    ライセンス取得の初期費用と必要だった時間、3年ごとの更新で支払われてる費用と時間がどれくらいか、差し支えなければご教示いただけないでしょうか?

    1. accountingworld より:

      Kさん
      コメントありがとうございます。
      ライセンスの継続(費用及びCPE)についてですね。
      費用に関してはそこまで大きくなく、安い業者を選べば年間数万円もせずに更新は可能です。
      ただし、全てのCPEの単位要件を満たすのはかなりの時間がかかることになります。
      (ちなみに監査法人ではこの単位を埋めることが可能な研修等が用意されているため比較的楽です。)
      仮にUSCPAという資格のみが必要である場合、KさんがおっしゃるInactiveで留めることもありだと思います。
      結論としては
      費用:年間数万円以内に抑えられる
      時間:一気にまとめてやると週末が何回かつぶれる
      これくらいの認識でいれば大丈夫だと思います。
      お役に立てれば幸いです。

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