申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

何を隠そう、僕はコンサルタントが嫌いだ。「コンサル」と略された呼び方も嫌いだし、戦略コンサル、人事コンサル等、分野ごとに自分がプロフェッショナルだと勘違いしているやつらがいるのもウンザリだし、あいつらが基本的に高級取りなのも意味がわからない。

何もイメージから嫌っているわけではない。僕は監査法人の非監査部門として、クライアントにアドバイスする立場にある。「え、それってコンサルじゃないの?」と思われた方、するどい。ただ、僕が思う監査法人のアドバイザリー(僕は絶対に自分の業務のことをコンサルだとは言わない)は、クライアントが習得するのが面倒な知識や経験を提供することによりお金をいただいていると思っている。US GAAPや内部統制の詳細な知識なんて、我々にある程度任せてくれた方が自社で育成するより簡単というわけだ。

話が逸れてしまったが、監査法人には別会社でコンサルを抱えているところも多い。僕が所属している監査法人も同様に(非監査部門があるのに!)、別にコンサル会社があり、そこの人間と共同でプロジェクトをやったことがある。その結果が冒頭の発言に繋がる。僕は、コンサルが嫌いだ。

まず何のためにいるのかがわからない。無駄に偉そうなやつもいる。知らないことを知ったかぶりする能力だけは長けている。特別な知識もない。要するに、一緒に仕事をしていて非常に邪魔だった。まぁ本当に使えないやつはプロジェクトから外れて消えていったが、それでもコンサル全体に対する僕の印象は最悪だった。

びっくりするくらい不要な前置きを長文で書いてきたが、今回はそんなコンサル嫌いの僕が「よくぞ言ってくれました!」とスカッとした内容の本を紹介したいと思う。僕と同じように、コンサルなんて虚業の最たるものだろうと思っている人は必ず手に取って欲しい。スカッとするから。

まずタイトルの時点で購入を決めた。

「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。ーコンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにするー」

素晴らしい。この一言に尽きる。

この本には、いかにコンサルタントと呼ばれる人たちが、「人」が働く会社という組織の中身をダメにしていったか(まさにぐちゃぐちゃ)の詳細が書かれている。そして、著者は元コンサルの人間であり、コンサルを辞めて事業会社で働き、再度コンサルを自分で立ち上げたキャリアの持ち主である。

いやまたコンサルやってるじゃねぇか!

著者曰く、今のコンサルはこの本に書かれているコンサルのダメな部分は除いて、あるべきコンサルを提供しているらしい。ちなみに著者は僕と違って全てのコンサルがダメといっているわけではなく、「こういうコンサルならOK」というものも紹介している。

この本の良いところは、ビジネスは全て「人間」で成り立っているということをしっかりと記載していることにある。人間の感情は非常に面倒で複雑なため、コンサルがよく出す「モデル(笑)」「スキーム(笑)」「メソッド(笑)」が普遍的に通用するわけがない。

その「人」を忘れて合理的なコンサルによる方法を取り込んだ結果、会社は非常に生きづらい場所になったと僕は思っている。ノルマ、将来計画、業績連動型報酬など、まさにアホのオンパレードと言える。

あなたの会社も、年に1回か2回、「今年度の目標」とかいう人事評価システムのゴミを書かせてはこないだろうか。中間期に進捗状況を書くことになり「あれ?年初に何書いたっけ?」となるあのゴミのことである。ちなみにうちの法人にはある。誰も見ない人事評価システムが存在している。これを書かされる度に僕はイライラする。明日のこともわからないのに、1年の計画を立てさせる意味がわからない。計画したい人だけ計画すれば良いと思うのだが。

こういう僕が嫌いな人事評価システムなども人事コンサル(笑)が発明したものだとわかり、ますますコンサル嫌いが加速した。あんなクソみたいなシステムで従業員を管理できると思っている会社の人間にもガッカリだが、それを発明したと勘違いしているコンサルも同様にクソなのだ。

書評を書こうと思ったのだが、思ったより暗い内容になってしまった。ちなみにコンサル(笑)で働いている人はこれ以上過ちを続ける前に読んだ方が良いし、コンサルでない人も今後ダマされないように読むことをおすすめする。うちのパートナー全員の課題図書とかにならねぇかな。

ちなみに、コンサルが考え出した様々な手法が如何にカスかということを書いているだけでなく、著者の経験からくる代替手法(というより、人間社会を考えると当たり前すぎて泣けてくる方法)も紹介されている。自分が所属するプロジェクトや会社をコンサルから守りたい人は、一読するのに十分な価値がある本である。

結局、全ては人なのだ。大事にすべきは人、それが分かる本である。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。” に対して2件のコメントがあります。

  1. きなこ より:

    コンサルとして数年間働いてきましたが、なぜあんなに高いフィーをもらえているのかよくわからない時がしばしば。やりがいはとにかく給料は高いので、雇われの身としてはあまり文句いえないのが正直なところです。コンサルってサラリーマンなのでリスク取らずに人のコンサルするなんてなんだか違和感を覚えてしまうのは自分だけでしょうか。。投資信託の世界のファンドマネージャー然り。世の中不思議。

    1. accountingworld より:

      きなこさん
      コンサルとしての貴重なコメントありがとうございます。正直僕も最終的なリスクをとらずにクライアントへアドバイスするのが仕事なので、大きなことは言えないですね。。。本当に世の中不思議なものです。また遊びに来てくださいね。

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