大阪都構想について

はじめに

東京から見ると大阪にたどり着くまでの間には、「横浜」と「名古屋」という都市が存在しています。そしてその先に、「大阪」という都市があります。これらの都市がどのように人を惹きつけているのかを比較したときに、「大阪」という都市が地理的に非常に恵まれない場所に存在していることがわかります。以下、それぞれの都市について見ていきます。

横浜について

まず横浜に関してですが、東京から非常に近く、東京都民は比較的軽い気持ちで行くことができます。逆に、横浜に住みながら東京まで通勤することも可能な都市となっています。僕の友人も数名、横浜に住みながら東京まで通勤しています。この「東京からの距離が近い」ということが非常に重要であり、横浜に企業が本社を置いても、そこまで支障が出ることなくビジネスを行うことができます。東京に存在する取引先とのやり取りもすぐに行うことが出来るし、気軽に東京へのアポイントも入れられるのです。つまり、横浜は「東京の経済圏内」ということが出来るのです。それに加えて、「港町」というイメージから、東京からも他の県からも人を引き付けることに成功しています。僕も横浜まで遊びに行くのは大好きです。横浜は東京という世界で一番の都市から近く、港町というイメージから東京と差別化もできている、企業と人を惹きつける魅力を持つ都市なのです。平成23年度の県内総生産は 約30兆4220億円(神奈川県)となっています。

名古屋について

言うまでもなくトヨタを筆頭に自動車経済圏を構築している(本社は豊田市だが)都市です。自動車を完成させるためには数万点の部品を必要とするため、自動車メーカーのもとにはその関連会社、その子会社や孫会社といった具合に最後のねじ一本まで作る会社と工場が必要になります。つまり、自動車が持つ雇用に対する影響というものは膨大なものになります。トヨタの2014年度の売上高はグループ会社も含めた連結決算で25兆円にものぼり、この日本でNo.1の自動車メーカーであるトヨタが存在していることにより、名古屋周辺には自動車産業に関する情報や知的財産が蓄積されるようになっています。この蓄積が、国内海外を問わず更なる企業と人を惹きつけるベースになっているのです。僕も名古屋には数度行ったことがあるが、名古屋駅を中心とした発展は驚くべきものがあり、企業が持つ経済効果を身に染みて実感します。平成23年度の県内総生産は 約31兆8820億円(愛知県)となっています。

大阪について

では、大阪はどうでしょうか。大阪は良くも悪くも「第2位の都市」です。「東京に次ぐ都市」という立ち位置になってしまっています。東京には様々な企業の本社機能が存在し、大阪の規模を上回っています。つまり様々な面で「大阪よりは東京で良くないか?」という結果になりやすいのです。さらに、東京に多数の本社機能があることにより、大学を卒業した新卒の人材は次々と東京に自動的に送り込まれる仕組みになっているのです。僕も関西の大学を卒業しましたが、ほとんどの友人が東京での就職という結果になっていました。関西の大学を卒業したのにも関わらずです。もちろん大阪にも本社機能を持つ企業は山ほどありますが、東京と比較した場合にはどうしても数で負けてしまいます。この人員吸収力の差は、時間を重ねるほど大きくなって都市の力として跳ね返ってきます。人が富を呼び、富が人を呼ぶサイクルです。

更に、観光客に対しても大阪は難しい位置にいることがわかります。「大都会で遊びたい」という人は大阪より東京を選択してしまう可能性が高いですし、日本の昔からの文化に興味がある人は大阪周辺に存在している「京都」と「奈良」という2大歴史都市に惹きつけられてしまいます。つまり、大阪はビジネスとしても観光としても「選ばれにくい都市」という立ち位置になってしまっているのです。人と企業を惹きつける都市としての力が、どうしても東京と比べると劣っているのです。先ほどにあげた横浜と名古屋という2つの都市は、大阪ほど恵まれない立ち位置には立っていません。「第2の経済都市」という大阪と比べると、2つの都市は東京と直接競争しているという都市ではないからです。

大阪の平成23年度の府内総生産は 約36兆6000億円(大阪府)となっています。日本で第2位の都市なのですが、愛知県や神奈川県と大きな差が開いているわけでもなく、東京都の約92兆3880億円と比べると圧倒的に差が開いていることがわかります。大阪出身の僕としては、悔しいことこの上ありません。

大阪に残された「都構想」という選択肢

ビジネスの点でも東京に差を開けられ続ける。観光の観点からいっても京都や奈良に囲まれてしまっている。このままの現状を維持すれば、ますます都市としての魅力が相対的に低くなっていきます。「東京に次ぐ都市」という立場上、どうしても競争相手は東京になってしまうためです。ではどうすれば良いのか。答えは至ってシンプルです。「東京より魅力的な都市になること」これに尽きます。これが、大阪に残された唯一の方法なのです。別の言い方をすると「選ばれる都市としての大阪」となること。今まで、大阪は都市として選ばれてきませんでした。これは、大阪の現状が雄弁に物語っています。そして、大阪の現状が証明するように、このままいくと大阪は「選ばれない都市」を続けることになります。今まで選ばれてこなかったのに、急に選ばれるようになる理由は見当たりません。

では「選ばれる都市」になるためにはどうすれば良いのでしょうか。ここであらためてタイトルに触れますが、「大阪都構想の協定書を可決(つまり賛成)」することがその第一歩になります。そこで一気に全国の注目を集める。「大阪が何かを始めるらしい」という空気を全国に知らしめる。そして、大阪府と大阪市を統合して、大阪一体となって「東京には存在しない何か」を大阪に集約、または生み出す。それは既に集約している製薬会社をさらに世界中から集めるという戦略かもしれませんし、統合型リゾートかもしれません(カジノは嫌!という人は総合型リゾートで画像検索してみてください。世界中の人からお金を落として貰う総合的なリゾート施設のことです)。とにかく、東京に存在しない何かを大阪に集約するのです。大阪にいけば、他には無い何かがあるというものをひとつずつ増やしていく。東京には絶対に負けない分野を増やしていくのです。東京に勝つということは、世界中の大体の都市には勝っているということを意味しています。これをひとつずつ重ねることで、世界中から富が集まることに繋がります。夢物語に聞こえるかもしれませんが、僕は全くそうは思いません。大阪のみが唯一、この作戦で世界の都市に勝てると信じていますし、大阪が「衰退する地方都市」という現状を突き抜けて大都市として発展するにはこの道しかないとも思っています。

では府と市が協力してやればいいじゃないかという人がいるかもしれませんが、それでは上手くいかないでしょう。どうしてか。上手くいくならもう大阪は東京に負けない都市になっているはずだからです。少なくともここまで差はあけられていないはずです。仮に、今の大阪府の都市の力が50で大阪市の都市の力が50だとします。「50の都市が一つずつ」では東京や世界の都市に勝てません。府と市を統合させることによって、都市の力が100になる、1つの都市としての大阪へ再編します。100の都市の力を持つ「大阪」を全体から見渡し都市計画を立て、大阪全体で東京を超える都市づくりを行う。世界都市になるためにはこのプロセスが必要になってきます。府と市を統合することによって、100の力で都市づくりをスピーディに行えるようにする。こうすれば大阪は間違いなく世界クラスの都市となれます。府と市で協力とか言っている場合ではありません。統合して大阪全体で勝負しなければならないのです。だって、今まで負けてきたじゃないですか。そのままの体制で東京や世界の都市に勝てると思うのがおかしいではありませんか。都構想を推進し、新しい大阪として世界と勝負する。大阪府全体の総生産は約36兆6000億円と書きましたが、これはポルトガルやオーストリアやタイといった国全体の総生産より多いのです。大阪だけでこれらの国1つより大きい総生産を持っているのです。大阪一体となった時の将来性は計り知れません。「よくわからん」という人や、賛成か反対かまだ決めていない人は、大阪の未来を信じるべきです。僕は信じています。

終わりに

東京の友人に「大阪ってどんなイメージ?」と聞いてみたことがある。

僕にとっての大阪は「日本第2位の経済都市」、「梅田や難波といった大都市」、「お笑い日本一」、「大阪城、大仙陵古墳などの文化を誇る都市」など、いわゆる「東京には負けへんで」といった大阪のイメージだった。大阪出身として大阪に誇りを持っているし、大阪のすごさは全国に知れ渡っていると思っていた。ところが、返ってきた答えは僕の想像をはるかに下回るものだった。

「さぁ、、、たこ焼き?」

「ウメダっていうのは聞いたことはあるけど」

「ミナミっていう危ないところがあるんでしょ?」

聞いたとき、心の底からショックを受けた。全然大阪が知られていない。大阪の人が「渋谷」「新宿」「池袋」など東京の街の名前をある程度は知っているのとは対照的に、色んな人が大阪のことをそこまで知らなかった。悔しかった。「大阪だってすごい」そう思っていた。

ただ、東京で暮らし始めて、東京という都市が持つ「人材」と「富」の吸収力を目の当たりにして、もしかしたら大阪は思ったよりまずい状態に置かれているのではと考え始めた。このまま行くと、「No2としての大阪」から「地方都市としての大阪」に落ち込むのではないか。大阪が東京より魅力的にならなければ、東京への人材と富の集中は止まることはないのではないか。残念ながら、このままでは多分、止まらないのだろう。そして、大阪は東京に人材と富を吸い取られ続けるのだろう。

大阪の衰退。大阪が好きな僕にとって、それは耐え難い。大阪には、東京より魅力あふれる都市になってほしい。そして、圧倒的な繁栄を見せてほしい。大阪ならできる。東京の一極集中を打破できる都市は、大阪以外ありえない。僕が知っている大阪は「まぁ今のままでええんちゃう?」という二流の都市ではない。僕が知っている大阪は「絶対に負けへんで!」というパワーにあふれた都市である。今回の住民投票でも、現状維持ではなく、未来を見据えた、未来に希望を持った意思表示を行ってくれると信じています。大阪都構想は、大阪の未来に対する希望です。

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