監査法人でついていくべきパートナーとは

監査法人において一番偉い職階は「パートナー」と呼ばれる人たちになります。パートナーの役割の一つとして、クライアントから仕事を取ってくる役割を担っているのですが、安い金額で仕事を提案して、数多くの仕事を受注するタイプのパートナーと、高い金額で仕事を提案して、数少ない仕事を受注するタイプのパートナーに分かれます。今回は監査法人において、できるだけ高い金額で仕事を提案するパートナーについていく方がお得という話をしたいと思います。

パートナーとは

監査法人におけるパートナーとは、監査法人内にある職階で一番上の役職になります。監査法人で働く人が最終的に目指す職階ですね。

  • スタッフ
  • シニアスタッフ
  • マネージャー
  • シニアマネージャー
  • パートナー

監査法人によっては上記の名称が違ったり、上記より職階が多い場合もありますが、基本的には上記の流れで出世していき、最終的にパートナーとなるのが監査法人の出世街道となります。ただ、パートナーは監査法人における「共同経営者」のようなものであるため、事業会社でいう「社長」ではなく、役員のようなイメージとなります。ちなみに監査法人にも「代表者」や「CEO」といった事業会社の社長に当たるポジションの人もいます。何をしてるかは誰も知りません

パートナーの役割

パートナーは最も偉い職階ですが、正直僕が所属している監査法人には一体何をやっているのかさっぱりわからないパートナーも残念ながら何人かいます。ただ、一般的にはパートナーの役割は大きく以下に分類することが出来ます。

  • 新規に仕事(プロジェクト)を取ってくる
  • 既存のプロジェクトを継続させる
  • プロジェクトに問題があったとき責任を取る

つまり、パートナーは仕事を取ってくる、取ってきた仕事を継続する、何かあった場合に責任を取るというのが役割なわけです。普段は何もしておらず、かつ申請に対する承認が遅くて仕事の進行するうえで邪魔でしかないパートナーも、契約が継続する限り、また新規に仕事を取ってくる、または何か問題があったときにクビになってくれれば立派に責任を全うすることになるわけです。

どういったパートナーについていくべきか

今回はこのパートナーの役割のなかでも「新規に仕事(プロジェクト)を取ってくる」に焦点を当てて、パートナーが新規にクライアントに仕事を提案するときに、高い金額を提示して数は少ないけど大きく儲かるプロジェクトを持つパートナーか、安い金額を提示して数多くの受注をするがあまり儲からないプロジェクトを持つパートナーのどちらのプロジェクトに入るのがおすすめかという話をしていきます。表で分けてみると、以下のような分類になります。

提案金額受注数
パートナーA高い少ない
パートナーB安い多い
パートナーのタイプ

もちろん「提案する金額も高くして、かつたくさん受注するパートナー」がいれば最高なのですが、世の中はパーフェクトな人間はほとんどいないため、大多数がこのどちらかに属するのことになります。では、このようなタイプのパートナーがいる中で、どちらのタイプについていく方が良いのでしょうか。

僕はこれまで監査法人に在籍する中で、両方のタイプのパートナーが契約しているプロジェクトに参加してきましたが、絶対に高い金額で提案できるパートナーのもとで働くべきだという結論に至っています。このことについて、まずは安い金額で提案するパートナーのもつプロジェクトではどこのようなことが起こってきたのかを、僕の経験を通して説明していきます。なお、ここからは高い提案金額のパートナーを高いパートナー、安い提案金額のパートナーを安いパートナーと呼ぶことにします。

高いパートナーと安いパートナー

安いパートナーのプロジェクトでありがちなこと

安いパートナーは、とにかく仕事を受注できれば良いと考えているため、基本的に相場(つまり他の監査法人)より安い金額で仕事内容を提案します。つまり、そのクライアントから貰える報酬金額が少ないということになります。仮にその安い金額で受注した仕事の名称を「安いプロジェクトA」としましょう。あなたは「安いプロジェクトA」にアサイン(配属)されることになりました。さて、ここからどうなるでしょうか。

勤務時間の問題

「安いプロジェクトA」にアサインされたあなたは、もちろん無料で働くわけにはいきませんので、そのプロジェクトに関して働いている時間を記録しなければなりません(これをチャージ等といいます)。ところが、そのプロジェクトは安い金額で受注しているため、普通に働いている時間を記録していくと、すぐに法人内で定めている「赤字ライン」に達してしまいます。そのため、そのプロジェクトに参加している間は、通常の勤務時間をそのプロジェクトに記録し、仮に残業したとしても残業時間はなかったことになる(つまりカラ残業)、ひどい場合には通常の勤務時間さえ時間をつけられない事態になることがあり得ます。簡単にいうと実際には7時間働いているのに、「安いプロジェクトA」には5時間働きました、と記録するわけです。もちろんその理由は「5時間で終わる仕事を7時間かけてやってしまったから、自分の仕事が遅いから」ですね。残りの2時間は「研修受けてました」とか「別プロジェクトやってました」といった報告になるわけです。

クライアント側の問題

また、別の視点ですが、安い提案金額を採用するクライアントは、もちろん全員というわけではないのですが「お金に余裕がない」場合があります。つまり割と苦しい状況の企業だった場合、現場の人間も苦しい状況下に置かれていることが多く、現場の空気感があまりよろしくない(簡単に言うとピリピリしている)ことがあります。そのような状況下でクライアントの人々と良好なコミュニケーションをとることが割と難しく、プロジェクトの遂行がスムーズにいかないことがあります。

これだけならまだ許せるのですが、一番最悪なのは「知識・経験は安くない」ということを理解していないクライアントとの仕事になった場合です。知識・経験が貴重かつ高価なものであると理解するのは実際に知識・経験を積んで初めて出来ることであるため、理解していないクライアントとの仕事になった場合、監査法人の人間に対する社会人としての最低限のリスペクトすら感じられない対応を取ってくることがあります。簡単にいうと下請けいじめや外部の人間に対するパワハラのようなことをしてきます。過去に参加していたプロジェクトで、当時の上司であるマネージャーが会議中にクライアントからとんでもない罵詈雑言を浴びせられていて、クライアントのレベルの低さに驚きを通り越して失笑しそうになり、笑いをこらえるのに必死だったことがあります。

人材の問題

こういうプロジェクトしか担当していないパートナーのもとには、全然人材が集まりません。監査法人で働くメンバーはプロジェクトに参加させられると無条件でずっとそこにいなければならないわけではなく、普通にプロジェクトの変更を希望したり、人事担当者に掛け合って一緒に仕事をしないように働きかけることが可能です。そのため、安いパートナーのもとから離れていくメンバーが多く、知識と経験が残らずに、数少ないメンバーに儲からない多くの業務が集中することになります。これがさらにメンバー離れを加速させることになり、という悪循環が生まれます。まさに負のスパイラルです。

どうしてこのようなことが起こるのかというと、安いパートナーの頭の中にあるのは、自分がいかに目標としている売り上げ金額を達成するのかということだけです。パートナーは「年間〇億円の担当プロジェクトを持つ」などの目標を持たされるため、それを達成するために提案時に他の監査法人と比べて安い金額を提示して、とにかく新規でプロジェクトを獲得するのは合理的な手法となるわけです。契約締結後に発生する不都合なことは、ほとんど下っ端で働くメンバーが影響を受けるだけなので、安い金額で受注できても自分は何も苦しまないのです。

もちろん、ここまでひどい状況に陥っているパートナーはそこまでいませんが、「なんか全然メンバーがそろっていないプロジェクトだな・・・」という感じのプロジェクトに入ってしまったら、担当パートナーの評判を聞いてみましょう。そしてやばそうであればさっさと逃げ出す方が安全です。長い期間そこにいると囲われるリスクがありますからね。

高いパートナーのプロジェクトの場合

高いパートナーのプロジェクトの場合は、安いパートナーのケースを反対にしてしまえばそのまま当てはまります。契約金額が高いので、参加しているメンバーは気兼ねなく業務時間をプロジェクトにつけることが可能です。頑張って仕事をしたときはそれに応じた残業代を貰うこともできますし、当然通常勤務の時間はそのプロジェクトで働いていたと記載すればOKです。

クライアント側も「高いお金を支払う余裕がある会社」であったり、知識と経験を買うためなら高額になるのは当然と認識している会社であることが多いです。監査法人のメンバーに対しても、お互いに協力して難題を乗り越える一員として認識してくれるため、こちらからの依頼については最大限配慮してくれることが多いです。

では、全くデメリットがないかというとそういうわけでもなく、クライアントの目線から見ると非常に高いお金を払って依頼しているため、仕事のスピード、品質など全てにおいて高い水準を求めてくることが基本になります。簡単にいうと期待値が非常に高いです。そのため、期待に応えるためにかなりの勉強や仕事の質の追求が必要となります。もちろん、これは見方を変えてみると自分の成長につながる良い機会にもなりますので、デメリットではないと考えることもできます。

そして、高いパートナーのもとには、数名のコアメンバーがおり、パートナーが持つそれぞれのプロジェクトで陣頭指揮を執っていることが多いです。その人を中心に知識・経験が下のメンバーにまで伝達されるため、仕事するための基本的な環境が整っています。例えば業務に関する引継ぎであったり、簡単な仕事から担当して徐々に難しい仕事にシフトしていくといった、いわゆる一般的な事業会社のような仕事環境が出来上がっているわけです。

少し話が脱線しますが、僕が聞いた話によると、高いパートナーが提案書を持ってクライアント先に行き、プレゼンをしてクライアントから「ちょっと金額が高いですねぇ。」と言われたときに「そうですね。我々高いんですよ。」と堂々と返答していたそうです。自分たちが高い金額で提案していることを認めながら、あえて価値を下げてまでプロジェクトを獲得しに行かない。こういった姿勢を貫くことができるのは、本当に自分たちの仕事に自信と誇りを持っているからだと推察します。下々のメンバーを不幸にしかしない安いパートナーにはこういう姿勢をみならってほしいものですね。

まとめ

監査法人にはパートナーと呼ばれる偉い人々がいるのですが、そのパートナーは実態として千差万別な状況となっています。仮に監査法人で生き残っていこうと思うのであれば、まずは自分の仕事に自信を持って、高い金額で仕事を提案しているパートナーのもとで働くのがおすすめです。クライアントから大きなお金を貰えているプロジェクトに参加する場合、勤務した時間分のお金は問題なくつけることができますし、人材の定着率が良いので比較的安定した環境でのびのびと働くことができます(とは言っても事業会社と比べると流動性は高い)。逆に、安い金額のプロジェクトで働く場合は、いちいち自分が仕事にかかった時間について内部からネチネチ言われたり、クライアントがそもそも支援したいと思えるような人々じゃないことがあります。僕も将来的には「高いお金を払ってでもあなたに頼みたい」と言われるような人になりたいと思います。

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