監査法人のプロジェクトと勤怠管理はどんなもの?

監査法人について知ってみようのコーナー、本日は監査法人における「プロジェクト」と「勤怠管理」について書いていきます。今回は監査法人の勤怠管理、つまりどのように勤怠をつけるかということと、それに付随してプロジェクトについてのお話になります。今回のお話はコンサル等のプロジェクト単位で仕事が進む企業であれば当てはまると思いますので、興味がある人は「この勤怠管理の仕組みは自分に合ってそうか」という観点で見ていただければと思います。ではさっそくいってみましょう。

一般的な会社との比較

監査法人における勤務システムは、一般的な会社と比べてかなり異色なものになっています。一般的な会社の勤怠システムは、自分あが出社した時に勤怠システム上で「出社」ボタンを押して、退社する時間に同じシステムで「退勤」ボタンを押すというのが基本だと思います。僕がこれまで働いてきた会社(アルバイト含む)では、タイムカードで出社・退社の時間を記録していたところもありましたが、普通の会社は出社時と退社時に記録を残して、それを勤怠の記録として1日が完了するのが当たり前だと思います。

では、監査法人の場合はどのように勤怠を記録するのかというと、「プロジェクト単位で記録」することになります。この勤怠管理システムについては監査法人がプロジェクト単位で動いていることを知る必要があるので、そこから説明したいと思います。

監査法人におけるプロジェクトとは

監査法人は、他の企業に対してサービスを提供し、その対価としてお金を貰うビジネスモデルとなっています。そして、その提供するサービスはクライアントとの間で「プロジェクト」となります。例えば、監査法人がクライアントAの経理部との間で「米国基準での決算報告支援」の契約を結んだとします。これは監査法人の視点でみると「クライアントAの米国決算支援プロジェクト」となるわけです。また、このクライアントAとの間に別のプロジェクトが走ることも珍しくありません。つまり、以下のような状態になるわけです。

クライアントAとの契約(例)

  • 経理部との間に米国基準決算プロジェクト
  • 監査部との間に内部統制構築支援プロジェクト
  • 企画部との間に子会社設立支援プロジェクト

このような契約が、複数の企業との間に結ばれています。もちろんクライアントによっては1つの契約しか結んでいないこともあります。そして監査法人はクライアントがプロジェクトを通して達成したい目標を達成できるように必死に支援するわけです。

監査法人で働いている我々は、それらのプロジェクトに対して「あきお君、来週からクライアントAの米国基準決算プロジェクトに入ってね」という感じでサラッとお願いされます(本当はもう少し丁寧)。 このようにクライアントAとの間の米国基準決算プロジェクトに配属されると決まった場合、すでにそこのプロジェクトで働いている先輩へ連絡して「来週からプロジェクトに参加することになったあきおです。よろしくお願いいたします。来週から何時にどこに行けばよいですか」と確認します。 そしてプロジェクトのメンバーとして参加し、必死こいて働くわけです。ここで、当初の話題である「勤怠管理システム」がでてくるわけです。

監査法人の勤怠管理システム

上記で説明した通り、監査法人ではプロジェクトに参加して、そこで働くことになります。先ほどの例でいうと、僕がクライアントAとの間の米国基準決算プロジェクトに参加した場合、そのプロジェクトに関する仕事をすることになります。監査法人では、その「〇〇プロジェクト」に費やした時間を記録してくことになります。表で表すと以下のような感じになります。

プロジェクト名〇月〇日 〇月〇日 〇月〇日 〇月〇日
クライアントA
米国基準決算支援プロジェクト
7時間3時間1時間4時間(残業3時間)
クライアントB
〇〇プロジェクト
4時間2時間3時間
クライアントC
△△プロジェクト
5時間(残業1時間)3時間
合計7時間7時間8時間10時間
監査法人の勤怠管理

この表は監査法人の勤怠管理システムを割と表していると思います。一番上の列にあるのがクライアントAとのプロジェクトになります。これ以外のプロジェクトにも参加しており、並行してその作業も実施した場合はそちらのプロジェクトにもかかった時間を記録していくことになります。そして残業時間に実施したプロジェクトの箇所には、残業時間を内訳として記録していきます。

ここで問題に気が付く方もいらっしゃるかもしれません。「プロジェクトに参加していなかったらどうなるの?」ということと「自分で好きな時間を書いて良いの?やりたい放題にならない?」ということです。

まず、「プロジェクトに参加していなかったらどうするの?」という話ですが、基本的には事務所に出社(コロナ禍においては在宅)し、どこかのプロジェクトからお声がかかるのを待ちます。忙しいときは、どれだけ使えない人でも何らかのプロジェクトから単純作業の要員としてお声がかかるので、プロジェクトに参加すると、そのプロジェクトのコードに時間を記録すれば大丈夫です。そして、プロジェクトからの声がかかるまでは法人内に用意されているe-learning研修を受講します。e-learning研修を受講することで、その受講にかかった時間は「研修」というコードに時間がつけられるわけです。

では、「特にプロジェクトにも参加していないし、e-learingも受講していないし、正直言って何もしてません」という人はどうすればよいのでしょうか。実は、その場合は「暇でした」というコードがあるので、そちらを使用して時間をつけることになります。特に監査法人に転職して入りたての人はどこのプロジェクトに配属されるかも決まらないこともあり、かつe-learingのシステムを理解していないことがあるため、「暇でした」というコードに時間をつけることがあるようです。

次に「自分の好きな時間を書いて良いのか」ということですが、じつは監査法人における時間の申告は「自己申告」です。つまり言い方を変えると好きな時間で申告してかまいません。ただし、変な時間のつけ方をしてないかモニタリングはされます。一時期めちゃくちゃ長時間働いている上司が毎日7時間だけ記録して記録を提出していると、「ちゃんと働いた時間をつけろ」ということで怒られたそうです。また、そこまで成果が出ていないのに残業時間をつけまくっていると「あの人、かなりこのプロジェクトで働いていることになっているけど、一体何をしてるんですか?」ということになります。結果として、過小にも過剰にも時間を記録しないことが一番無難だということになります。

以上で、監査法人における勤怠管理システムの話を終わりたいと思います。

監査法人のプロジェクトと勤怠管理はどんなもの?” に対して2件のコメントがあります。

  1. apple より:

    興味深いブログを書いていただきありがとうございました。
    いくつかお尋ねさせていただけないでしょうか?

    ・仕事で英語を話す・書く・読むことは多いでしょうか?
    ・在宅勤務は週にどれくらいされていますか?また、在宅の場所は自宅のみなど、指定されているのでしょうか?
    ・長期休暇を取得する方はいらっしゃるのでしょうか?

    1. accountingworld より:

      appleさん
      コメントありがとうございます。僕が知る限りの範囲で回答しますね。

      ・仕事で英語を話す・書く・読むことは多いでしょうか?
      プロジェクトによっては英語力は求められます。特に海外子会社との関係をどうにかしたいプロジェクトにアサインされた場合、話す・書く・読むのすべての能力が求められます。ただ、監査法人内でみると海外と関係するプロジェクトはあまり多くないと思います。

      ・在宅勤務は週にどれくらいされていますか?また、在宅の場所は自宅のみなど、指定されているのでしょうか?
      人によりますが、在宅勤務は一気に普及しました。僕の同僚で数か月以上出社していない人もいます。在宅勤務の場所は自宅に限定されています。やはり扱う情報がクライアントの内部情報のため、そこは厳しくなっていますね。

      ・長期休暇を取得する方はいらっしゃるのでしょうか?
      アドバイザリー部門は繁忙期と閑散期がうまく切り分けられないので人によっては長期休暇を取っていない人もいますが、普通に長期休暇を取得することは可能です。僕は最長で10営業日くらいの休暇を取ったことがあります。監査部門は繁忙期と閑散期の差が激しいので、1ヶ月くらい休む人もいると聞いたことがあります。

      以上です。回答になっていればうれしいです。

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