ド素人がRPAを導入サポートして得た知見を紹介します

RPAというタイトルに惹かれて見ていただいた皆さんこんにちは。簡単に自己紹介しますと、僕はUSCPAとして監査法人で働いている社畜です。監査法人というのは公認会計士が集まってできている法人のことで、基本的には「監査」と呼ばれるお仕事をしているところになります。言ってしまえば会計や内部統制の専門部隊というイメージですね。

そんな僕が、気が付いたらなぜかクライアントにRPAを導入するプロジェクトに参加することになり、四苦八苦しながらもなんとかいくつかのRPAを導入することができたので、全くのド素人がRPA導入から得た「こういうことは気を付けようね」ということを紹介したいと思います。自社でRPAの導入を検討している人の参考になれば幸いです。

とはいえ、皆さんは「え?監査法人で働いているのに、どうしてRPAの導入なんてやってたの?」と疑問に持たれたかと思います。僕もそう思います。会社のいうことにYes、Yesと言い続けていたら、なんと会計や内部統制に微塵も関係ないプロジェクトにぶち込まれてしまったんです。許せねぇ。どうにか少しでもこの経験を人生の役に立てようと思い、振り返りながらついでに皆さんのお役に立てればと思いタイピングしています。

では、前置きが長くなってしまいましたが、本編に入りたいと思います。RPAを導入する際に気を付けるべきことはズバリ以下の項目になります。それ以外にも「いやこれも重要だろ」みたいなのがあったらコメント欄で教えてください。なお、このページでは「RPA」や「ロボ」を特に定義なく適当に使用しているのでご了承ください。

RPA導入する際の留意点

  • トップから現場までやる気が無いと進まない
  • RPA導入の前に業務標準化が必要
  • 外部のシステムまで対象に含めない
  • RPAを実装したら全てOK、ではない

ではRPAの留意点について、それぞれについて細かく見ていきます。

トップから現場までやる気が無いと進まない

RPAの導入に関して、経営陣から現場で働く末端の従業員まで、RPA導入の重要性を理解し、かつ導入したいとやる気満々であることが非常に重要です。正直これが一番大切で、これさえクリアしていれば残りの留意点を含めてスイスイと進められる気がします。例えばトップダウンで経営層が「最近DXって流行っているみたいだな。よし、まずは各部門から最低5つはRPA化するようにしよう!」と勝手に意気込んで、現場からは「クソ忙しいのに何言ってんだよバカか。面倒くさいしやりたくないよ。」という反応がある場合は、ほぼうまくいかないと考えて間違いありません。ちなみに僕は何度かこのパターンのクライアントへRPA導入サポートをする機会がありましたが、本当に悲惨なことになります。

現場としては「上が勝手に決めたこと。現場のことも知らないのにウザい。」と思っているので、ロボを導入するという面倒なことをしたくないわけで、それはキックオフミーティングの時から以下のような発言として出てきます。

  • 「(担当している)業務にロボは適さないと思いますよ」
  • 「非効率な作業が増えるだけだと思います」
  • 「ロボを入れても時間は削減できないんじゃないですかねぇ」
  • 「ロボ実装の手間を考えたら、既存の業務を続ける方が効率的ですよ」

このようなネガティブ発言が次々と飛び出してくることに加えて、会議に遅刻してくるのは当たり前、ヒアリングで聞いていた業務が次の会議の際にはコロッと変わる、連呼される「言ってませんでしたっけ?」という発言、突然会議がリスケされる、業務に関する質問にまともに回答しない、というのはザラにあります。根本的に社会人としてどうなんだろうと思うところはあるのですが、このような状態のクライアントの業務に対してロボを導入したところで、最終的に要望を深く組み込めない使い勝手が悪いロボが完成してしまうのです。

こうならないためには、トップ自らがなぜロボを導入する必要があるのか、どのような意義があるのかを周知徹底し、現場レベルでも「よし、ロボ入れてどんどん楽になろう!」とやる気満々にならなければなりません。ここが最重要ポイントとなります。トップから現場までRPA導入に積極的か。そうでない場合、トップ層がきちんとRPA導入の意義や会社として推進する必要性を現場に浸透するまでしつこく訴え続けているか。もしトップ層が導入を決めて、残りは現場に丸投げという態度だった場合、まともなRPAを導入するのは至難の業になるでしょう。ここはそのプロジェクトからは手を引いた方が良いレベルで重要です。

RPA導入の前に業務標準化が必要

次にRPAを導入する際に必要となってくるのが、「業務の標準化」です。これはRPAの導入前に出来る限り検討しておくべきことで、業務の標準化を経たRPA導入こそが成功への一歩となります。業務の標準化とは、RPAに向けて業務のプロセスそのものを変革することと、エクセルなどの資料内容を標準化することを指します。

これまでRPAの導入サポートをしたクライアントに多かったのが、エクセルなどの最終成果物に至るプロセスが全然定まっていないということでした。監査法人のクライアントなので、基本的に名の知れた大企業が多いのですが、それでも言葉を選ばずに言うと、ファイルの作成ルールが統一されていない「グダグダ」なファイルがかなり多かったです。例えば担当者依存が強すぎて、毎回担当者が手作業で異なる作業をしているファイルや、同じセル内に関数と数字の手入力が混在しているファイル等が続々と登場します。

個人的に一番驚いたのが、報告書Aの元資料の作成方法についてヒアリングをしてる際に、毎年違う範囲をコピーペーストで持ってきて、そこから毎回違うスタイルの表形式に自分で工夫しながら作成し、毎回異なるフォーマットとして完成している資料の説明を受けたときでした。最終的にやらなければいけないことは毎回全く同じなので、一度カチッとフォーマットを決めてしまえばそれ以降の資料作成は楽になるはずなのに、「いちいち考えるのが面倒だし、毎回手動で作成できるから楽。」という返事をいただいたときは自分の耳を疑いました。

それ以外にもセルの内容をよく見ていると「=D10+F10+123」と関数の後ろに直接数値が入力されているセルがあり、担当者曰く「修正はそこのセルに手打ちでやります」と自信満々。いや、修正は別途セルを設けてそこから関数で飛ばそうよとうなだれたことが何度もあります。

これらの業務をそのままRPA化しようとすると、100%うまくいきません。ロボを実装する際にも意味不明な作業手順を読み解く必要がありますし、業務と資料を固定しなければRPAを導入した後に少しでも変化があるとロボの改修が必要となってしまいます。そのため、まずは業務の標準化をすることがどうしても必要なのです。そうすると、万が一RPAの導入に失敗したとしても、標準化された業務、資料が残るので、今後の業務の安定度を増すことができます。業務の属人化を防ぎ、誰にでも簡単に担当することが出来るようになるため、自分だけの業務を作ってしがみつく社員がいる場合には、RPA導入を契機に業務を標準化することで”対応”することが可能です。

外部のシステムまで対象に含めない

これは僕がド素人だから感じたことかもしれませんが、RPA導入によりロボによる操作対象とする範囲に、社外のシステムを含めると難易度が激増するためおすすめできません。導入する場合は、自社内で全て完結する作業に絞った方が圧倒的に効率が良くなります。

例えば、日次の入出金データをネットバンキングから出力し、入出金明細をもとにエクセルである資金繰り表に記載して、資金ショートしないかを確認する業務があるとします。これを作業レベルに分解してみると以下のようになります。

  1. ネットバンキングにログイン
  2. 入出金明細を出力
  3. 資金繰り表を開く
  4. 入出金データを資金繰り表に転記
  5. 資金残高を確認し、策を講じるか検討

上記のうち、1~4までの業務プロセスを全てロボが実行できるように実装すれば、日次での資金繰り表の更新がボタン1つ「ポチッ」と押せば済むようになるため、長い目で見ると大幅な業務時間の短縮につながります。事実として、このような業務に対応するロボを組み込むサポートをしたことがあります。ですが、このように外部のシステムでの作業にまでRPAの対象範囲を含めるのは危険です。

まず、ロボを実装するまでは問題なく出来ると思うのですが、その後が問題です。基本的にRPAは「実装したときの業務プロセスが変化しない」ことを大前提としています。そのため、読み込む画面や資料に少しでも変更があった場合はエラーとなり、変更後に合った形に改修する必要があります。

そのため、外部サイトをロボの対象に含めた場合、外部サイト側が何らかのアップデートを実施した場合はすぐにロボが使えなくなってしまいます。自社の内部だけでとどめておけば、その範囲は更新しないといったガバナンスを効かせられますが、まさか外部業者に「ここの更新、やめてもらっても良いですかね?」と頼むわけにはいきません。

普段からパソコンでwebサイトを見たり、スマホでアプリを使用している人であればわかると思いますが、画面の細かいところは意外と頻繁に変更されています。企業側もユーザーに合わせて日々試行錯誤してるため、それは当然のことなのです。なので、そこが変わらない前提でRPAを実装してしまうと、実装してもすぐに改修しないと使えない、使い勝手が悪いものに仕上がる可能性が非常に高いのです。つまり、出来なくはないがコントロールできないリスクが高まるということです。結局、担当者としてはいつダメになるかもわからないロボなど使う気にもならず、浸透しないという結果が待っています。

RPAを実装したら全てOK、ではない

トップ層にありがちな勘違いが「とにかくRPAを実装すれば工数が削減されてうまくいく」という幻想を抱いていることです。もちろん従業員に不満があるのはわかるが、一旦RPAを導入して工数が削減された場合は「便利じゃん!」ということで使われることになるだろうと考えるわけです。ハッキリ言って、これは大きな間違いです。RPAは、導入した後も従業員がしっかりと使用し続けるよう使用実績のモニタリングや進捗確認会議をする必要があります。

そして、継続して使用することにより「実装時には見落としていた、こういう動きをしてくれたら助かるもの」がでてくるため、そうった要望をどんどんと改良依頼としてあげていき、少しずつ改良を加えていくことで本当に便利なRPAとすることができるのですが、これも最初にあげた「現場のやる気」が重要なポイントとして関わってきます。

ちなみに、最悪なのがトップ層が「RPA入れて工数が削減されたんでしょ?じゃあこういう業務も空いた時間でやってよ」とまだ慣れてもいない段階から言ってくることです。担当者としてはRPAの実装ということでいろんなことを協力してきたのに、いざロボを使うとなった段階で慣れてもいないのに業務が増やされるとなると、今後二度とそのようなことに協力しようと思わなくなるし、それを見ている別の社員も自分の箇所にRPAを入れるのは絶対に阻止しようと躍起になります。こういう現場のことを一切わかってないトップ層、本当によくいるんだよなぁ・・・。

最後に

今回は監査法人勤務の自分から見たRPA導入に関する注意点を書いてきたのだが、書いている最中にも「どうして自分はこんなことやってきたんだろう?」と何度も不思議な気持ちになりました。人生いろいろあるものですね。ただ、その状況を嘆くだけだと何もならないので、せめて少しでも自分のなるようにこれまでの経験を振り返ろう、そして振り返るのであればブログに書こうと思ったわけです。ほとんどいないとは思いますが、僕と同じように、よくわからないけどRPAの導入に携わることになった人へ、少しでもお役に立てれば幸いです。

ド素人がRPAを導入サポートして得た知見を紹介します” に対して2件のコメントがあります。

  1. たんたんめん より:

    いきなりかなり個人的な相談をさせて頂きたく、コメントを残しております。海外大四年生でUSCPAの取得を目指しています。最近、2社の大手監査法人アドバイザリー部門から内定を頂くことができました。どちらも憧れていた会社で、選ぶことができません。周りの人にはたぶん業務内容や年収がすごく変わることはないから好きにきた方がいいと、言われます。
    面接して頂いた方々も素晴らしい人たちばかりで、何を聞いても具体的に答えて下さりましたが、実際に監査法人のアドバイザリーに働かれてる人のお話が聞きたくコメントしております。どうぞよろしくお願い致します。

    1. accountingworld より:

      たんたんめんさん
      コメントありがとうございます。そして2社からの内定おめでとう御座います。
      僕が回答出来る範囲であれば何でも答えますよ。

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